メレリオ・ディ・メレー – MELLERIO dits MELLER
マリー・アントワネットを顧客に持つメレリオが、王妃へのオマージュとして発表したコレクションに花を添えて。ジュエリーには王妃の好きなピンクサファイアが使われている。
王妃たちに愛された宝石商
400年の歴史を誇り、フランス5大宝石商に名を連ねる「メレリオ・ディ・メレー」。その顧客にはマリー・アントワネットやマリー・ド・メディシス、ナポレオン3世妃ウジェニーら王妃たちの名前を見ることができる。
メレリオ・ディ・メレーは、イタリアではじまった宝石商であったが、1613 年、当時まだ幼かったルイ13世の暗殺計画を偶然にも耳にし、その陰謀を暴くのに一役かったといわれている。そしてその褒美として、ルイ13世の母で摂政のマリー・ド・メディシスがフランスでの特権を与え、王室御用達の宝石商メレリオ・ディ・メレーが誕生した。以降、マリー・アントワネットをはじめ多くの王妃たちに気に入られ、急成長を遂げた。
歴代王侯貴族の名が連なる顧客帳が保管されたアーカイブ
ヴァンドームの本店の地下のアーカイブには、フランス革命後からのデッサンやフランス皇妃ジョセフィーヌ・ボーアルネの注文書などが顧客帳といっしょに大切に保管されている。
マリー・ド・メディシスのはからいで宮廷に出入りするようになったメレリオに、1780年、当時の王妃マリー・アントワネットの目に留まるという幸運が重なった。ある日マリー・アントワネットは、ヴェルサイユ宮殿の大きな門の前で、宝石を詰めた鞄を首にぶら下げ、宮廷に出入りする貴族や貴婦人たちにジュエリーを売る少年に目を留めた。少年は、15歳のイタリア人宝石商、ジャン-バティスト・メレリオ。それ以降、アントワネットは顧客のひとりとなり、宮廷の人々にも彼を推薦するようになっていったという。このときアントワネットから受けた大きな寵愛への感謝の気持ちを表し、メレリオは「マリー・アントワネット コレクション」として王妃の可憐な上品さや華麗さを表現した宝石を発表している。
多くの王妃たちに愛されたメレリオの技術は今日まで連綿と受け継がれてきた。2005年にブランド独自のダイヤモンドのカッティング「メレリオカット」を発表。2007年にはメレリオに在籍している宝石職人のクリストフ・ピロー氏がMOF(フランスの国家最優秀職人章)の称号を得ている。この名誉を授与された職人は宝石業界ではとても珍しい。そのことからも、メレリオのずば抜けた技術の高さがうかがい知れる。
パリ ヴァンドーム広場にある本店地下のアーカイブには、歴代王侯貴族の名が連なる顧客帳やデザイン画とともに、さまざまなアンティークジュエリーも大切に保管されている。本店を訪れる人々を魅了するメレリオの歴史とデザインの素晴らしさに敬意を表して、優しい輝きを放つピンクトルマリンの宝石に気品あるバラのアレンジを添えた。
左/世界の王室・皇室からのオーダーメイドが多い、メレリオ本店の優美な店内。本物を知るセレブ達が多く訪れる。
中/店内に飾られたマリー・アントワネットの肖像画が、王妃への敬意を物語る。
右/マリー・アントワネットに捧げるダイヤモンドがちりばめられた扇には、王妃の好んだピンク色と流れるようなリボンのモチーフが使われている。
古都で出合う、伝統の美シャンパン酒
シャンパーニュ地方、エペルネの中心に広がるレピュブリック広場から東へ伸びる「アヴニュー ド シャンパーニュ」。別名「エペルネのシャンゼリゼ」といわれるこの通りの両方には、煌めく宝石のごとく、名だたる老舗シャンパンメーカーが連なっている。シャルル7世の戴冠式を行った歴史あるこの地方の、重みと風格のある「シャンパン・ドゥ・ヴノージュ社」を訪ねた。
1837年に設立された由緒あるシャンパン・ハウス「シャンパン・ドゥ・ヴノージュ社」は、スイス・レマン湖のほとりを流れるヴノージュ川にその家名の由来を持つ。創業以来の伝統的手法を重んじ、厳選したぶどう果実から絞った、一番絞りの果汁を発酵させ、細心の注意を払って熟成される。社長のジル・ド・ラ・バセティエール氏が1979年の古いヴィンテージをテイスティングさせてくれた。1979年のヴィンテージは市場に出ていない貴重なもので、特別なお客さまにだけふるまうというもの。瓶の口におりを集めて、おり抜きをするデコルジュマン、その伝統的な方法を見せてもらった。ドゥ・ヴノージュを代表する「コルドン・ブルー」のラベルに描かれているブルーのリボンは、ヴノージュ川の青と、中世の騎士団の青い衣装になぞらえたものだと言う。また、カラフ型のクリスタルのボトルが美しい「ルイ15世」は、シャンパンを深く愛し、発展に貢献したフランス国王ルイ15世に敬意を表してつくられたもので、上品で複雑な味わいをもつ逸品。ドゥ・ヴノージュ社のシャンパンは少量高品質を追及、その姿勢はボワゼルの一員となった今でもかわらない。
左/おりを集めて一気に開ける見事な手さばきのバセティエール氏。
中/クリスタルのカラフ型がめずらしい「ルイ15世」はピノ・ノワールのしっかりとした骨格とシャルドネの繊細さが、複雑な味わいをもった逸品。
右/「シャンパン・ドゥ・ヴノージュ社」は、1837年の設立以来、フランス国内のみならず、いち早く海外への進出を果たした。