HOSHINOYA Taketomijima~星のや 竹富島
数ある島々の中でも、竹富島は昔ながらの景観を今もそのままに遺している稀有な存在といえる。「沖縄の原風景」と称され、真っ青な空に白い雲、赤瓦の屋根が印象的な小さな島だ。
人口およそ350人。昭和50年代初期まで水道がひかれていなかった。明治時代まで象形文字が使われ、そろばんの代わりに藁を縄のように結んで数を示すというような島独自のコミュニケーション手段が用いられていたという。
珊瑚が隆起してできた不毛の土地ゆえに、人々はあらゆる苦難を乗り越えるためには、どんな時にも助け合いの心を忘れなかった。その「うつぐみの心」といわれる精神こそが、独自の文化を保存し、21世紀へとつなげてゆく原動力となったのだろう。
南西諸島の多くがリゾート開発や土地売買の波にのまれていた頃、竹富島の人々は一致団結し、島民すべての民意を反映して「竹富島憲章」を制定。「売らない」「汚さない」「乱さない」「壊さない」「生かす」という5原則の下、いまだ竹富島を手つかずのものにしてきた。
インルームダイニングも、スタッフがバトラーのようにパーソナルなサービスを提供してくれるので気軽に愉しめる。そんなさりげない心づかいが何よりも『星のや 竹富島』滞在の楽しみにつながっている。
島の人々の暮らしは年に22回行われる祭りと共にある。祭りの期間中、人々は歌い踊り、神々に向かってそれぞれに与えられた役割を果たすのだという。そうした信仰の場でもある先祖代々の土地を人々の強い意思と誇りで守り続けてきたのだ。
上勢頭芳徳さんと星野リゾート社長星野佳路さん。竣工式時の大切な一枚。
そんな類まれな精神で時代の波をくぐりぬけてきた竹富島の営みを、ありのままに体感することのできる宿がある。『星のや 竹富島』だ。リゾート開発とは無縁とも言えるこの島に誕生した「奇跡のリゾート」といっても過言ではない。
広大な敷地にあらわれた『星のや竹富島』の離島の集落。ここには竹富島の人々の暮らしに根づいた伝統文化への限りないオマージュが込められている。そのすべてが島の生活文化から生まれたものだ。
グックという石垣に囲まれた竹富島の伝統家屋の造りをそのままに踏襲した客室は、まさにこの島に暮らすように滞在することの醍醐味を味わせてくれる。
― シーサーののった赤瓦の屋根。照りつける太陽に心地よい影をつくりだしている屋根下のさりげない空間。そして裏庭の涼しげな木陰― 島の人々の生活の知恵から生まれた、快適で過ごしやすい住環境とモダンな快適さも追求された室内のおもむきは、この島のゆったりとした空気感をよりいっそう感じさせてくれる。
ほのぼのとした集落で、そぞろ歩きを愉しんだ後、『星のや 竹富島』の「我が家」に戻る時の満足感。くつろぎの空間に戻って、光り輝く浜辺の光景や島の人々との語らいを反芻する至福の時―。
縁側から寝室の小窓へと竹富島のやさしい風が通り抜けていく。こんなおだやかな空気に包まれて、いつまでもまどろんでいたい。
日が昇るとともに始まり、日没とともに一日の終わる離島の暮らしを感じる。
この地の文化をありのままに愉しむのに、もう一つ忘れてはならないものがある。食の愉しみだ。『星のや 竹富島』では、フレンチの旗手・中洲達郎シェフの「琉球ヌーヴェル」を通して、この土地でしか味わうことのできない食彩を堪能することができる。 豊かな食材の数々は、シェフ自らが知られざる土地の名生産者を探しあて、直接交渉して入手するものがほとんどだという。
一つひとつの皿に描かれた食材の数々を一口味わうだけで、それらの生まれた背景が五感を通して一面に広がってゆくような感覚を覚える。八重山の自然の恵みを最も良い形でゲストに伝えたいというシェフの熱意と人間力が随所に反映された料理だ。
「食を通して土地の風土を知ることが、その地の文化を最も身近に感じる手がかりになる」と語る中洲シェフ。長期滞在者のためには8品のフルコースを10通りでも30通りでもアレンジできるという。ぜひシェフのマジックを毎晩ゆっくりと味わってほしい。
前菜:竹富島産クルマエビと島人参のパロティーヌ サラダ仕立て。島人参やフェンネルなどこの地にしかない食材の味も愉しみたい。コバルトブルーが美しい皿は、沖縄の名窯、読谷村・大嶺工房の作品。皿に描かれた食後の余韻を味わうのも、またもう一つの愉しみだ。
島ハーブたっぷりのオリジナル泡盛。
リゾートらしさも忘れないが、客室群の集落からはあえて見えないようになっている。
星のや 竹富島
沖縄県八重山郡竹富町竹富
星のや 総合予約 TEL 050-3786-0066
www.hoshinoyataketomijima.com
石垣島の離島ターミナルより高速フェリーで10分
『星のや 竹富島』では、10月20日から11月21日まで「種子取祭を愉しむ1ヶ月」を開催。
詳しくは上記までお尋ねください。