Taj Falaknuma Palace, Hyderabad(タージ・ファラクヌマ・パレス, ハイデラバード)
グランド・ロイヤル・スイートのひとつ「ベガム・スイート」。リビングルームとベッドルームが分かれている。パレスの中でも静かな場所にありハネムーンでの滞在にも人気。
「101ダイニング・ルーム」と名付けられた31mのロングテーブルが圧巻の空間。名前のとおり101席あり、頭上には5つのベルギー製シャンデリアが輝く。
10年の歳月をかけて蘇ったロイヤルパレスへ
宮殿のテラスはアフタヌーンティーを楽しむ特等席。バリ島アマンダリなどの造園で知られるランドスケープアーキテクト、マデ・ウィジャヤ氏が手がけた庭園の先にはハイデラバードの市街地が広がる。
近代的なハイデラバードの空港から雑多な街並みを抜けて小高い丘のふもとに着くと、出迎えたのは馬車。「ここからパレスまでお届けします」。スタッフに告げられてゆるやかな坂道をあがる。馬上からは眼下にハイデラバードの街並み。インドIT産業の中心とされる都市だが、ローズ色の街並みは高層ビルもなくローカルな風情を漂わせて美しい。
やがて、目の前にあらわれたのはまさしく宮殿。シェルブルーのイタリア産大理石の建物に流麗な装飾。かつてハイデラバードを統治していたニザーム・マフブーブ・アリ・カーンがゲストを迎えるために築いた「タージ・ファラクヌマ・パレス・ハイデラバード」は別名「ミラー・オブ・ザ・スカイ(空の鏡)」。その名前のとおり青い空を映し、天空と溶けあうようにそびえる宮殿の荘厳さは圧巻。10年の歳月を費やしてインドの名門タージ・ホテルズがみごとに当時の面影を忠実に再現し、21世紀の賓客を出迎える。
ファラクヌマ・パレスを建設したのはニザーム家9代目ミール・マフブーブ・アリ・カーン(1869.1911年在位)。ニザームとはハイデラバード藩王国支配者の称号(君主号)。インドの王たちの中でも最も富を持った一族といわれている。
9代目ニザームも数多くの逸話を残した人物だ。いわく同じ衣装を二度と身に着けなかった。彼の妃たちは宝石をちりばめた王冠、黄金の装飾品や真珠、高価な宝石で飾り付けられた金糸の豪華なドレスで身を飾り、膨大な量のダイヤモンド、サファイヤ、エメラルド、ルビーが宮殿地下に満ちあふれていたとも。ライムの実ほどもある280カラットのヤコブダイヤモンドを文鎮代わりに使用、また金塊を運んでいた12台のトラックがあまりの重さに立ち往生したなどきらびやかな伝説に事欠かない。
そのニザームが世界各国から招いた客人たちのために建てたのがファラクヌマ・パレス。英国ジョージ5世、ロシア最後の皇帝ニコライ2世なども滞在。当然、その贅を尽くした空間は歴史・美術的にみても一級品。タージ・ホテルズはできうる限り、当時のままを忠実に再現することを試みつつ、現在一流のアーキテクト、デザイナーを集め最上質のパレスホテルへと昇華させている。
宮殿を抜けると中庭をはさんで客室棟が広がる。丘の上に建てられたロケーションのため風が吹き抜け心地よい。イスラム文化の影響を色濃く残すハイデラバード。ときおり祈りの時間を伝えるアザーンが哀愁を帯びて響き渡る。ここでは時間がゆっくりと巻き戻されるように過ぎていく。
贅を尽くした空間に、至高のホスピタリティ
市街の夜景がみごとなゴル・バンガローはスペシャルダイニングとしても使用できるテラス。民族音楽のライブパーフォーマンスもここで。
「タージ・ファラクヌマ・パレス・ハイデラバード」に設けられたゲストルームは60室。どれもみごとな意匠とゴージャスさを誇っているが、この美しきパレスの滞在を堪能したいのならば、やはりスイートルームを選ぶべきだろう。
最も広いのは「ニザーム・スイート」。かつて城主ニザーム自らが使用していた豪奢な空間はプライベートプールも備え、まさに王のような風格。磨きこまれたオークウッドのフロアにトルコから持ち込まれた家具、ベルギー製のシャンデリアがきらめき、みごとだ。また、女性好みなのが王妃の名前を冠した「ベガム・スイート」。ピンクローズにピスタチオグリーンといった華やかな彩りと愛らしい装飾が施され、「ニザーム・スイート」とは異なるエレガントさがいい。そして、極上の空間を最上質のホテルへと変えるのが卓越したスタッフのホスピタリティに他ならない。
出迎えから、送りだす瞬間まで。ゲストたちはパレスのスタッフたちの手厚いもてなしを常に享受することになる。つかず離れず。端正な伝統衣装に身を包み、柔らかな笑顔と共にゲストを充足させるサービスはタージ・ホテルズが長年培ってきた上に成り立つプロの流儀。仕えるだけでなく、時には話し相手として、またハイデラバードの語り部としてゲストにこの地の魅力を伝える。それも当然か。ハイデラバードはインドの中では決して古い場所ではないがそれでも400年の歴史を持つ都市であり、宮殿内に眠るのはどれもミュージアムピースにも匹敵する逸品揃い。彼らが話す伝説には思わず耳を傾けたくなる。
滞在の極意はまだある。宮廷料理を思わせる美食もまた、欠かせない。
洗練されたハイデラバード・インディアン・キュイジーヌが味わえるのは「アダ」。王家に伝わる秘伝のレシピを組み込んだメニューは新鮮な食材にスパイス、ハーブを多用し、爽やかな辛さと風味が味蕾を刺激する。合わせるのはややバタリーなピノグリや、シャンパーニュあたりか。また、「セレステ」は地中海レシピのイタリアン&ヨーロピアンメニューを提供。さらに驚いたのはゲストが望めばアジアンスタイルの料理も用意してくれること。世界各国から訪れるゲストすべてを満足させるもてなしの奥深さには感心させられる。夕刻、ハイデラバードを一望にするテラスで伝統音楽のパフォーマンスが始まった。隣にはきらびやかな民族衣装をまとった若きカップル。ここではゲストもまた歴史の一部になる。10年の歳月を経て、ハイデラバードの至宝が再び輝き出した。
Taj Falaknuma Palace, Hyderabad(タージ・ファラクヌマ・パレス,ハイデラバード)
Engine Bowli, Falaknuma, Hyderabad, India
Tel: +91-406-629-8585
The Taj Mahal Palace, Mumbai(ザ・タージ・マハール・パレス)
インド最大都市ムンバイ。経済の中心として、また世界遺産としての歴史的な表情を持つエキゾチックな古都。ポルトガル、英国の植民地時代を経て、当時のクラシカルな建築物、史跡も多く、どこかセピアカラーの憂いをまとい旅情を誘う。
そのムンバイで最も有名なホテルといえば、間違いなく誰もが答えるのがここ。1903年、タージ・ホテルズ創業者ジャムセットジ・タタによって誕生した最初のホテル「ザ・タージ・マハール・パレス」だ。
エリザベス女王、A・ヘプバーンも滞在、迎賓館としての品格
「ドルフィン・スイート」は人気の客室。バスルームには精緻なモザイクタイルのイルカが泳ぐ。
「ザ・タージ・マハール・パレス」が開業した日、ゲストはわずか17名だった。それから100年を超え、今では英国エリザベス女王、オバマ大統領など国家君主や元首をはじめ、ジョン・レノン、マザー・テレサ、オードリー・ヘプバーンなど往年のセレブリティや名士たちが投宿。インドを代表する格式あるホテルとして君臨する。
ホテルは開業当時の面影を残すパレス・ウイングと1973年に建てられた高層のタワーウイングに分かれる。もちろん古くからのゲストたちに愛されるのはクラシカルなパレス・ウイング。プレジデンシャル・スイートとなる「タタ・スイート」をはじめ、ビートルズのジョージ・ハリスンなど著名アーティストに影響を与えたシタール奏者ラヴィ・シャンカルの名前を冠したスイートなどムンバイの歴史を物語るバラエティに富んだスイートルームはすべてパレス・ウイングに位置。窓の外にはムンバイのもうひとつのアイコン、インド門が望むロケーションを、世界中の賓客たちが見下ろしたのかと思うと感慨深い。
パレス・ウイングのスイートルームとクラブルームに滞在するゲストがアクセスできるパレス・ラウンジは重厚さと風格ある社交場。VS. ガイトンデ 、ラム・クマールなどインドの巨匠たちの貴重な絵画はホテルのためのオリジナル。極上のワインやコニャック、シガー、さらにバトラーたちの卓越したホスピタリティとあわせて至福の時間を楽しみたい。
ダイニングのオプションも魅力的だ。伝統的なインド料理の「マサラ・クラフト」をはじめ、ムンバイ港を望むハーバービューの「スーク」では洗練された中近東料理が。また、地元のハイブロウなゲストたちに人気なのが中国料理の「ゴールデン・ドラゴン」や、日本料理の「ワサビ・バイ・モリモト」。いずれもグルメアワードを受ける実力派ばかり。日中はカジュアルな服装でゆったりとくつろぐゲストたちも、夜にはシックにドレスやスーツに着替えてディナーを楽しむ姿は実にエレガント。時代を超えて変わらぬ品格がこのホテルには確実に息づいている。
タワー・ウイングからプールへとつなぐ回廊。開業当時はここがメインエントランスだった。
館内には歴代の賓客たちの写真が飾られる。
The Taj Mahal Palace, Mumbai(ザ・タージ・マハール・パレス)
Apollo Bunder, Mumbai, Maharashtra, India
Tel: +91-226-665-3366
Vivanta by Taj – Madikeri Coorg(ヴィヴァンタ・バイ・タージ-マディケリ, コールグ)
周辺には村落があるほかレストランで提供されるオーガニックな野菜やハーブを栽培する自家菜園が。プールサイドは夜にはキャンドルが灯りロマンチック。
開けた眺望の「プレミアム・インダルジェンス・ルーム」は130㎡の広々とした空間。伝統的なコールグの民家をイメージしたヴィラタイプだ。
洗練さと最先端のサスティナブル・リトリート
眺望のいい山腹にあるレストラン「ファーンツリー」。
ムンバイから国内線で南へ約1時間。カルナータカ州マンガロールに到着する。そして、そこから迎えの車で山岳地帯を抜けること3時間ほど。たどり着くのが肥沃なレインフォレストに囲まれたヴィヴァンタ・バイ・タージ_マディケリ、コールグ。2012年12月に開業したタージ・ホテルズが手がけるインド最新のエコリゾートだ。
ゆっくり深々と、清涼な高原の空気を吸い込む。標高1158メートル、敷地面積約22万坪という広大な空間は、自然を愛するナチュラリストはもちろん、日々のストレスから開放されたい多忙なゲストにこそふさわしい桃源郷かもしれない。早朝には雲海も発生するモイスチャーな気候はビーチリゾートとは異なったゆるやかな心地よさとリラクゼーションをゲストに与えてくれる。
「ヴィヴァンタ」はタージ・ホテルズの新ブランドのひとつ。次世代に訴求するデザイン性とライフスタイル観を表現したホテルやリゾートがコンセプトに。ここ、マディケリもゼロエミッションを目指すサスティナブルさに特化している。
たとえば地元の伝統的なスタイルを継承した建物はリバーストーンや堆積土を使用。外装やレンガもすべてハンドメイドで、リクレイム資材を多用。照明にはCFL(コンパクト形蛍光ランプ)とLEDのみを採用し、限りなく持続可能な環境を作り上げている。しかし、そこはタージ・ホテルズ。ゲストに負荷を強いることのないラグジュアリーさを兼ね備えているのがさすがだ。
スタイリッシュなヴィラに、開放感あるダイニングやバー。自家菜園やイチゴ畑を望むプールは高原のリゾート感を演出してゲストたちのお気に入りスポットに。極上の快適さを提供しつつ、エココンシャスさを目指すところが次世代リゾートの姿勢を象徴している。
鳥の声で目覚め、星空に抱かれる五感を覚醒させる桃源郷
人気の早朝のヨガレッスンはゲストのための無料プログラムのひとつ。
ヴィヴァンタ・バイ・タージ-マディケリ、コールグには63のゲストルームが山腹に点在する。レストランやスパなどには専用カートでスタッフが連れていってくれるが、散策を楽しみながら歩くゲストも少なくない。
周囲を緑深い山々や、レインフォレストに包まれた環境は、野鳥、動植物の宝庫。専属のネイチャーガイドと歩くウォーキングツアー、バードウォッチング、ヘリテージトレイルなど、ゲストのためのアクティビティも充実。より、本格的なアドベンチャーを求めるのなら森の中でのサバイバル体験ができるスペシャルツアーもある。
もちろん、何もせずに森林浴を楽しみ、リゾートライフを満喫するのもいい。ナチュラルな時空間を過ごしていると、自然と早朝に目覚めるから不思議だ。動植物の生命力、大地の息吹きを感じながらゆるやかに五感が覚醒していくようでもある。
リゾートのあるカルナータカ州は南インドに位置するため、ここではインド南部の伝統的な料理が味わえるのも楽しみのひとつだ。ココナッツミルク、ライム、カレーリーフ、チリなどを多用するのが南インドの特徴。辛みの中にエキゾチックな味わいが溶けあうのが真骨頂。さわやかな刺激が後を引く。
また、南インドは「生命の科学」と呼ばれる伝統療法アーユルヴェーダ発祥の地。日本ではエステの一種と思われているが、本来は個々のボディバランスを整える医療行為に近いもの。リゾート併設の「ジヴァ・グランデ・スパ」にはアーユルヴェーダ専門のドクターが待機。ヘルスチェックを受けてから行う本格的なアーユルヴェーダ・トリートメントが体験できる。
大自然の中に身を置き、オーガニックな環境で体を動かし、滋味ある料理を味わい、トリートメントでデトックス。コールグでの滞在がもたらす開放感は言葉ではあらわせないほど、生命力に満ちあふれている。
Vivanta by Taj – Madikeri, Coorg(ヴィヴァンタ・バイ・タージ-
マディケリ,コールグ)
1st Monnangeri, Galibeedu,Coorg, Karnataka, India
Tel: +91-827-266-5800
The Taj West End(ザ・タージ・ウエストエンド)
125年目のレジェンド
カルナータカ州都バンガロールは「インドのシリコンバレー」と呼ばれるほど近年、国際化が進む都市。
そのバンガロールで最もクラシックかつエレガントなホテルとして有名なのが、「ザ・タージ・ウエストエンド」。前身となる寄宿舎として誕生したのが1887年。増築を重ね、チャールズ皇太子、ウィンストン・チャーチル卿、ハリウッドスターなども投宿。1984年からはタージ・ホテルズ傘下として運営されている。
ホテルの敷地に入るとまず、目をひくのが豊かに生い茂ったトロピカルガーデンののびやかな美しさ。一角にはホテル開業時からあったという巨木がみごとな枝ぶりで広がり、新しいホテルにはない時間の積み重ねが背景にあることを実感する。
ゲストルームはその庭園の中に点在する。VIP御用達は専用プールを備えた「タタ・スイート」。スティング、ジュリア・ロバーツ、オランダ王妃などが滞在している。また、クラブラウンジが使用できる「タタ・クラブ・ルーム」はエグゼクティブたちに人気だ。市街から一歩。涼やかな庭園に囲まれた優雅なホテルは別世界。バンガロールの社交人たちに愛される理由がここにある。
「タタ・スイート」のベッドルーム。370㎡の広さにダイニング&リビングルーム、ジャグジー付きバスルーム、庭園、プールを備える。
ウエストエンドで人気なのがアフタヌーンティー。正統派イギリス式のほか、南インドスタイルなどが選べる。
スパ施設がある建物「チューリップブロック」は1887年創業時のオリジナル。わずか10室の寄宿舎としてスタートした。
The Taj West End(ザ・タージ・ウエストエンド)
#25 Race Course Road, Bangalore, Karnataka, India
Tel: +91-806-660-5660