ビジネスでもレジャーでも、やはり香港に行きたい!
Hong Kong,my favorite
今年、中国に返還されて20 年という節目の年を迎えた香港。発展を続けながらも元来の混沌とした姿を残し、その魅力である新旧のコントラストはいっそう華やかに際立っています。そんな香港は日本からのアクセスも良く、富裕層たちを惹きつける旅の目的地のひとつであることに変わりはありません。
香港を拠点にビジネスを展開するエグゼクティブたちの声を通じて、その魅力に迫ってみます。
(写真:大橋マサヒロ)
大切なビジネスミーティングの後、バーで寛ぎのひと時を満喫する香港の人々。
マンダリン オリエンタル 香港のMバーにて。
香港の企業コンサルタントに聞く
活況を呈す香港経済の現状とは
香港に赴任、毎日新しい発見に感動
Hong Kong Navigator Consultants Ltd.
代表 森實章さん Mr. Akira Morizane
1995年6月10日、ビルがすぐ横に見えたかと思うと急に機体が傾き旋回しはじめ、あっという間に着陸。乗客にスリリングな思いをさせるパイロットの粋な計らいに感動し、これからの香港はどのような感動を与えてくれるのか期待と不安に満ち溢れていました。商社兼松のアパレル部門の責任者として毎日何組ものお客様と面談、会食し、朝は6時過ぎから事務所でマンツーマンの指導による中国語(普通話)レッスンを受ける日々が続きました。多様な人々や文化に触れる一方、余暇の過ごし方も、ゴルフや様々なスポーツと趣味が身近に楽しめ、そして毎日新しい発見があり、その分だけ感動があることを知りました。それもそのはず、香港の75%は自然保護区なのです。忙しくも充実した日々を過ごし、赴任して4年が経った頃、中国本土、特に上海近辺への生産拠点へ軽工業の舞台がシフトし、時を同じくして本社繊維部門が不採算事業として分社化したのを機に、同社を退職し香港で起業することを決意しました。中国がWTO(世界貿易機関)に加盟し中国のゲートウェイとして香港に大きな可能性を感じたからです。現在は香港ナビゲーターコンサルタンツの代表として、商社時代に培った豊富な貿易や経営の知識を活かし、主に日本から香港へ進出する企業の会社設立、会計記帳秘書業務、企業管理等のサポートを行っております。
恵まれたビジネス環境にある香港
日本は20年間、世界では類をみないほど1人当たりのGDPは殆ど変っていません。今年の香港のGDP成長率は約4% で推移しています。税制は明快で低税率、個人所得税は最高でも15%で住民税もありません。例えば専業主婦と子供2人の家庭では年収が1000万円の家庭でも個人所得税はわずか35万円です。法人税は16・5%ですが、更なる引下げが検討されいています。国際競争力ランキングも常に上位にあり、ヒト、モノ、カネすべての面において、優れた環境だと実感しています。
中国の一帯一路構想の元で発展する香港
日本の企業もチャンスを掴んで欲しい
変化する香港の消費動向
森實章 / Hong Kong Navigator Consultants Ltd. 代表
商社勤務時代の貿易についての豊富な経験、海外勤務時代の会社の設立、運営、清算などの経験を活かし、香港に進出する企業の設立、運営、会計面での幅広いソリューションを提案している。趣味はソフトボールをすること。休日には早朝から汗を流し、若い人たちとの交流を楽しむ。大阪府出身。
昨年11月に印紙税率が引き上げられたにもかかわらず、今年8月までに住宅価格は約10%上昇しました。21年前は1SQF(約30cm四方)あたりの価格が大卒労働者の月収に占める割合は約32%でした。ところが2016年の数値で見ると約67%まで上昇しました。この高騰により住宅購入を諦める若者が増え、自分たちのライフスタイルをより充実させるためのサービスなどへの消費が増える傾向にあります。年間香港人の3人に1人が日本の15都市を結ぶ空の便で旅行し、レンタカーで移動して多様性に富んだ地方の食文化を堪能するのもこうした理由が関係しているのです。
香港で感じる中国のパワー
先日、日本人の富裕層の方がレバルスベイ(香港島南部にある高級ビーチリゾート)で部屋を借りようとすると、家賃が月15万香港ドル(約215万円)でも中国人入居者の希望が多く、空き部屋が見つからないと嘆いておられました。欧米系の企業が密集していたセントラルでもブランド好みの中国企業や中国の富裕層がどんどん入ってきています。昨年1年間で来訪した約5670万人のうち、中国本土からの来訪者数は全体の76%を占めているのです。高級料理店の客単価ひとつとっても1位が中国人、2位が香港人で、3、4位がなくて5位が日本人と言われているくらいです。中国パワーを無視してビジネスは語れません。
ますます発展する香港
一国二制度の下で発展してきた香港の経済は、中国本国との関係なしには語れません。レッセフェールといって香港の自由度をこのまま維持できるかというのが、今後のポイントになってくると思います。そんななか、中国はいま、ご存知のように一帯一路という経済・外交圏構想を打ち立てています。もちろん香港政府は中国と共に、中国沿岸部から東南アジア、さらにインド、中東、アフリカ、欧州と連なる21世紀海上シルクロード実現に向け、インフラ整備のための投資を推進していくことになります。その具体例の一つとして、マカオや珠海を香港と繋げる高速道路や世界一長い橋の建設が来年の開通を目指して進められています。重要な戦略プロジェクトがすでに動き出しており、香港という狭いエリアに限らず、グレーターベイエリアと呼ばれるより広い広東省の湾一帯の経済的な発展が期待されているのです。
日系企業のアドヴァンテージ
日本の企業には日本にしかない素晴らしいサービスや商品、技術が地方にもたくさんあります。多様性を重んじ様々な思想、文化、人種を受け入れる香港はどの企業にとってもビジネスがしやすい環境にあります。日本企業もアジアのハブとしての香港に進出しておけば、なにかしらのチャンスは掴めるのではないでしょうか。そんな時、香港に進出される企業や個人の皆様のお役に立てるようサポートしていきたいと思います。
香港で躍動する注目の企業 1
中国動力(控股)有限公司
高い技術力をもって環境社会に貢献
将来は日本の企業とコラボも視野に
China Dynamics (Holdings) Ltd.
主席 張 韌さん Mr. Cheung Ngan, Tony
中国本土の鉄鋼会社の総経理(社長)として、香港を経由して鉄を日本や韓国に販売するビジネスを確立。アジア東北部への鉄の輸出販売の8%を占めるまで企業を成長させた。同時にその企業を上場させた功績が認められ、中国の大手鉄鋼メーカーである首都鉄鋼集団との提携を実現させるなど、張韌さんは本土を舞台にビジネスの手腕を発揮してきた。香港との縁は提携先の首都鉄鋼集団が買収をした香港の企業の代表を任されたから。そして香港返還の翌年、現在の中国動力(控股)有限公司の代表に就任した。そんな張さんに香港で手がけるビジネスについて聞いた。
— 中国動力の事業内容は?
大型の電気バスの開発・製造を中心に手がけています。まだ香港では小さな会社ですが、工場は四川省の重慶に2つあり、現在の年間生産台数はおよそ2000台。3つ目の工場も建設中で、それが稼働するようになれば、年間2万5000台生産できるようになります。売上でいうと250億人民元を見込んでいて、おそらく中国でもっとも大きな電気バスのメーカーになるのではないでしょうか。
— なぜ電気バスの製造を?
大学で精密機器の分野を学んだこともあり、元々製造業にはとても高い関心を持っていました。ご存知の通り、中国ではPM2.5など大気汚染が深刻な社会問題となっています。そうした中、これからのエコ社会を考えた時に、電気で動くバスに対して将来性があると注目しました。最近では香港政府が環境に優しい乗り物に高い関心を持っていることもあり、電気バスの導入についてプロジェクトの立ち上げを提案してきました。
— ビジネスの拠点としての香港の印象は?
中国に返還されてもなお、特に金融や技術開発の面において自由度は高いと感じています。税金の安さもそうですが、私どものように大きな資金を要して技術開発などをする企業にとっては、資金調達をしやすいというメリットも実感しています。そういった意味では、日本を含む海外の企業で高い技術力を持ちながらもマーケットに出せないでいたり、資金の面で問題を抱えているような企業があれば、弊社としては協力や提携はしやすいのではないかと考えています。
— 経営者として心掛けていることは?
常々社員たちの前で言っているのは、私たちの会社はアップルのような会社を目標としているということ。大きな会社にしたいという意味ではなく、高い技術力とアイデアを持って、それを製品という形にしていこうということです。志を大きく持ち、目標を定め、技術力をもって商品化させることで、一つひとつ事業を成功させたいと思っています。
— 今後の展開は?
私どもが製造する電気自動車はヨーロッパの基準もクリアして世界中に輸出販売することが可能です。ですから中国国内だけでなく視野を広く世界に向け、グローバルな展開をしてきたいと考えています。日本にも進出したいという思いも強く持っています。政治的な面で中国と日本の関係はギクシャクしていますが、こんな時だからこそ、民間レベルで友好関係を築いていく必要があるのではないでしょうか。もちろん、ハイテク技術の高い日本の企業とコラボレーションして、お互いの技術力を高められていけたら嬉しいです。
張韌/中国動力(控股)有限公司 席主
多忙なビジネスのかたわら、自然をこよなく愛し、山登りに出かけることが多い。家族が暮らすオーストラリアには月に一度のペースで帰省するそう。日本との関係については「高い技術を持った大学の先生や海外への展開を目指す企業の社長などとの交流を、今後、どんどん深めていきたい」と言う。
香港で躍動する注目の企業 2
Lucas Global Co., Ltd.
過ぎたことは気にせず前を向く
何をしたかより何をするかが重要
Lucas Global Co., Ltd.
会長 和田 家次也さん Mr. Max Katsuya Wada
大阪の中学校を卒業後、大工職人の見習いとして働き出したことを皮切りに、和田家次也さんの山あり谷ありの人生の幕がきって落とされた。健康食品の販売会社を共同経営したかと思えば、飲食店や不動産会社の経営に手を伸ばしもした。順調に右肩上がりだったビジネスはバブルの崩壊と共に急降下。20 億円もの負債を抱えてしまう。借金はきれいに完済したが、「3年で溜まった借金を、5、6年もかけて返したわけだから、割に合わなかったよね」とあっけらかんと当時を振り返る。息を吹き返したように、今度はネットワークビジネスで財を成し、いっときは年商400 億円を稼ぎ出したと言う。しかし、それも45 歳で事業から手を引き、突然、独り香港へ移住する決断を下した。現在はコンサルティング会社を中心に、約60 社を傘下におさめるグループ企業を経営する。そんな酸いも甘いも経験してきた和田さんは、新天地としての香港でのビジネスで何を感じとったのか。
— 事業内容は?
日本からの進出企業にワンストップでサービスを提供しています。企業の悩みや課題に対して解決策を提案するだけではなく、例えば、人材が不足しているならば、人材を代わりに集めて提供したりということもしています。グループ企業の中には香港ローカル向けの求人サイトを運営している会社もあるので、グループ企業としての強みを生かしていることも特徴です。
— なぜ香港に来る決断を?
妻には「2、3年、ちょっと香港に行ってくるよ」という感じで、妻も特に何を言うことなく、「機嫌よう頑張り」と言われたくらい。そんな軽い気持ちでしたが、いつの間にか香港に根をおろして、すでに10年も経ってしまいました。最初は香港で誰か知り合いやツテがあったわけではなく、何も知らない、誰もいない状態。ただ、香港に様々な国の出先機関が集まっているのを見ると、いろいろな面で活性化していると感じました。活性化しているということは、景気が良くてお金が集まる。それならビジネスを起こしやすいと考えたのです。あと、何といっても税制が簡単明瞭で、しかも税金が安いことも大きかった。日本と香港の税率を比べてもその差は歴然で、私のような力のない人間には、「よーいどん」でスタートしても、その差は埋められない。日本でハンディキャップを持って勝負をしても勝てるわけありませんから。そういった面で香港はビジネスの舞台として最適だったんです。
— 肌で感じた香港と日本の違いは?
先ほども申しましたが、香港は活気に満ちあふれているので、街を歩いていたらお金がたくさん落ちているんです。もちろん現金が落ちているという意味ではありません。よく見たらビジネスチャンスがたくさんあるんです。僕にとっては落ちているチャンスをどのように拾ったらいいか考えるだけでした。あと、日本では一度交渉でトラブルになると、孫子の代まで絶対に付き合いをしないというような風潮がありますよね。しかし、香港の人たちは対照的で、何かあっても次の機会に会えば「それは前のこと。無問題(大丈夫)」と。過ぎ去ったことは仕方ないんだという気質があるんです。彼らにとっては、すでに起きたことではなく、今から何をするかが大切なんですね。過去よりも先に目を向ける気質は自分にはとても肌に合って、それもビジネスがやりやすい理由でもあります。
— 大切にしている考えは?
不動産業を手がけている頃は目標設定で資産を100億円にした方がいいなどと考えていました。でも、大きな借金をした経験を通してお金などよりも、もっと大切なことを教えられました。人の大切さです。だからいかに多くの人が集まり、彼らが腹の底から良かったと笑ってもらうことが僕の目標となりました。僕個人でも会社でもいい。そこに関係した人々が香港という異国の地で結ばれて良かったなと評価してもらえたら、僕はそれでいいかなと思っています。
和田家次也/ Lucas Global Co., Ltd. 会長
信条は「反省はすれど後悔はせず。天命が下ったら笑ってありがとうと言える人生であろう」と、後悔はしないように毎日、積み残しがないように仕事に取り組む。波乱万丈の人生を歩み、いつもギリギリセーフで助けられてきたからこそ、「最後は笑って終われたら幸せ」と言う。
Information
Lucas Global Co., Ltd.
TEL +852-2153-0880
My favoriteHotelsin Hong Kong
個性派そろう、香港のホテル
ケリーホテル香港からのシティビュー。窓の外には香港ならではの高層ビル群を望む。
モダンでスタイリッシュなシャングリ・ラの新ブランド
Kerry Hotel, Hong Kong ケリーホテル香港
香港の新たなランドマーク
ジェームズ・ヒルトンの小説『Lost Horizon(邦題:失われた地平線)』で描かれた伝説の理想郷のように、寛ぎの空間とおもてなしでゲストを至福の世界へと誘ってきたシャングリ・ラ グループ。贅を極めたシャングリ・ラ ホテルをはじめ、トレーダースホテルやホテルジェンなど、多様化するゲストの旅の目的に合わせ、様々なブランドを展開している。そんななか、新たなブランドとして上海と北京から始まったのがケリーホテルだ。機能性を兼ね備えた斬新なデザインと心のこもったサービスを特徴とし、トレンドに敏感な人々に注目されている。
今年4月、香港に同ブランド3番目のホテルとしてケリーホテル香港が満を持してオープンした。ロケーションは九龍半島東南部のウォーターフロント。ガラス張りの斬新な建物が、眩しい陽光を受けて煌めく様子は都会的なシーンを生み出し、早くも新たな香港のランドマークとしての存在感すら漂わせている。
1. アウトドアデッキはアーバンリゾートを謳うホテルを象徴する場所。豊かな緑と青い空に包まれる。
2. インフィニティプールではビクトリア湾との一体感を味わえる。香港島のスカイラインも目の前に迫るよう。
3. ホテルはウォーターフロントの眩しい陽光を受けて煌めく。
スタイリッシュな開放空間
館内に足を踏み入れると、吹き抜けの広々としたロビーエリアに迎えられる。正面には壁一面のガラス窓が建物に沿って曲線を描くように続き、瑞々しい緑をたたえたプライベートガーデンが目の前に飛び込んでくる。
ロビーラウンジではビジネスエグゼクティブたちがミーティングをする横で、地元のファミリーが軽食を楽しみ、子供たちの笑い声も時折、耳に届いてくる。ここに訪れるゲストに共通するのは、誰もが思い思いのスタイルで寛いでいること。そして皆がリラックスした表情なのが印象的だ。
ホテルの設計を手がけたのはアンドレ・フー氏。ザ・アッパーハウスなどのデザインで知られる新進気鋭の若手建築家である。館内は都会的で洗練されながら、同時にゆったりとした空気が流れるようで、標榜するアーバンリゾートを見事に体現している。自然やアートを巧みに取り入れた空間は開放的で居心地が良く、風が吹き抜けるような清々しささえ感じられる。ゲストにリラックスしてもらいたいとの思いをデザインで実現しているのは、さすがとしか言いようがない。
ビクトリア湾の眺望を享受
客室は全部で546室。そのおよそ60%の部屋からビクトリア湾を正面に望む。フルサイズウィンドウからの眺めはまさに絵画のような美しさで、良い運気までもが運ばれてくるよう。室内のインテリアはクールでスタイリッシュな色合いのケリーブルーとグレーをアクセントに、落ち着いたトーンにまとめられている。派手さを抑えることで窓の外の光景をより際立たせるという工夫が施されているのだ。客室はスタンダードルーム、ザ・クラブ、スイートと3つのカテゴリーがある。なかでも「クラブプレミアシービュールーム」にはバルコニーを備えた部屋もあるので、五感でビクトリア湾を感じたい方には是非ともおすすめだ。
ロケーションの魅力を享受するのは客室だけに限らない。エグゼクティブシェフのマシュー・ベンニンク氏が指揮を執るレストラン4軒とバーでも、恵まれた環境のなかで多彩なメニューを堪能できる。なかでも、7階に位置する中国料理「紅糖(ホントン)」は、香港島のスカイラインを一望しながら、シェフのケン・ユ氏による創造力に満ち溢れたモダンな料理を味わえると人気だ。食後は連結するバーラウンジ「レッドシュガー」の屋外テラス席で心地良い風を頬に受けながら、クラフトビールや樽熟成したアジアンテイストのカクテルなどを楽しむのもいいだろう。
ウォーターフロントに誕生したケリーホテル香港で過ごす特別な一日。それは恵まれた環境を五感のすべてで感じられる、実に贅沢なひと時となるはずだ。
昔も今も香港を象徴するラグジュアリーホテルの雄
Mandarin Oriental, Hong Kong マンダリン オリエンタル 香港
植民地時代のポルトガルの邸宅にインスピレーションを受けたマカオスイート。落ち着いたインテリアが特別な一夜を約束してくれる。
贅を尽くした5ツ星の隠れ家
アジアを代表するホテルブランドとして、世界の主要都市やリゾート地など、20ヵ国で30軒のラグジュアリーホテルを展開しているマンダリン オリエンタル ホテル グループ。マンダリン オリエンタル 香港は同グループのフラッグシップホテルとして1963年に開業した、深い歴史を有する伝説的な老舗ホテルである。
ロケーションはビクトリア湾を望む香港島の中心地。セントラル地区の喧騒を他所に、館内は心地良い静寂に包まれる。イタリア製のブラックマーブルが目を引く重厚なロビーには、クリスタル製の大きなシャンデリアが妖艶に輝き、ゴージャスで落ち着いた雰囲気が贅沢な気分にさせてくれる。
全501室の客室のなか、67 室あるスイートはそれぞれ個別に装飾され、東洋の伝統と調和するように現代的な贅が尽くされている。特に個性的なインテリアが施されたスイートは宿泊の楽しみの一つだ。例えば、最上階にあるマカオスイートは、ポルトガルのコロニアル風の邸宅からヒントを得たインテリアにまとめられ、東洋的なデザインとの融合が見事に図られている。両開きの扉の奥に広がる空間は優雅さを極め、足を踏み入れた瞬間に思わず感嘆の声がもれてしまう。
ホテル滞在の醍醐味
香港滞在の醍醐味であるグルメに関してもマンダリン オリエンタル 香港では期待を超える体験をさせてくれる。様々なジャンルのレストランやバーが10店用意されるなか、3つがミシュランスターを獲得しているという豪華さ。ピエール・ガニエールの香港の拠点となる「ピエール」での革新的なフランス料理や、鳥かごを模したランプが天井からぶら下がり、香港で最も美しいといわれる「マン ワー」でいただく広東料理など、大人のためのとっておきのダイニング体験を堪能したい。
至福のリラクゼーションの世界へと誘うスパの存在も外せない。フォーブストラベルガイドで5ツ星を7年連続して獲得している「ザ・マンダリン・スパ」は、ホリスティックなアンチエージングのトリートメントを受けられると人気。1930年代の上海スタイルを採用した落ち着いた隠れ家的な雰囲気のなか、世界中の賓客をもてなしてきた至福のトリートメントで体の芯から癒されれば、慌ただしい日常から束の間、エスケイプできるだろう。
空間・食・スパと、マンダリン オリエンタル 香港での滞在では、あらゆるシーンでベストな体験を叶えてくれる。温かなホスピタリティに心満たされながら、老舗ならではの極上ステイをじっくりと満喫してはいかがだろうか。
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2フロアを占め贅沢な隠れ家のような雰囲気に包まれる「ザ・マンダリン・スパ」。フォーブス トラベルガイドで5ツ星を7年連続受賞している。
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着飾った大人たちが夜な夜な集う「Mバー」。25階からは煌めくスカイラインと共にクラシカルなカクテルを楽しめる。
Ⓒ Mandarin Oriental, Hong Kong
驚きと感動をもたらす高級ブティックホテル
The Landmark Mandarin Oriental, Hong Kong ザ・ランドマーク マンダリン オリエンタル香港
新たに登場したエンターテインメント・スイート。リビングルームにはエンターテインメントウォールが設けられ、ポップコーンメーカーやワインディスペンサー、カクテルステーションが並ぶ。
磨きのかかった客室デザイン
マンダリン オリエンタル 香港では老舗としての歴史と格調高さを感じられる一方、こちらのホテルはスタイリッシュでコンテンポラリーなデザインを前面に出したブティックホテルとして、時代の最先端を感じられる。対照的な表情を持ちながらも、どちらも温かなホスピタリティでラグジュアリーな滞在を叶えてくれるという共通項は、マンダリン オリエンタル ホテルグループとしての矜持に他ならない。
ザ・ランドマーク マンダリン オリエンタル香港は、2年前に創業10周年を迎え、それを記念して全111室ある客室を刷新するという大規模なリノベーションに着手した。香港出身の女性空間デザイナー、ジョイス・ワン氏がデザインを手がけた空間は、シャンパンゴールドやブラウンなど落ち着いた色を基調とし、シンプルでエレガント。それでいて柔らかな印象に心が安らいでくる。
空間を構成する家具はデザイナー自らが特注したもの。客室をモダンに演出するアクセントになり、中には主役のように存在感を主張するものもある。例えば、壁面に埋め込まれたパントリーは、まるでジュエリーのショーケースのように煌めき、目を見張るほどの美しさ。また、両サイドを包み込むように弧を描いたベッドのヘッドボードは、ベッドの上に腰をかけても寛げるよう、背もたれになるように配慮されるなど、新しく磨きのかかった客室は、女性デザイナーならではの優しさと美に対する創造力が遺憾なく発揮されているのである。
今年8月には遊び心が詰まった豪華でスタイリッシュなエンターテインメント・スイートが登場したばかり。現代におけるホスピタリティのスタンダードを引き上げる取り組みの数々に、ザ・ランドマーク マンダリン オリエンタル香港での滞在がますます楽しみになってくるだろう。
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「アンバー」は、『2017世界のトップ50レストラン』に選ばれるなど、世界が認めるコンテンポラリーフレンチのレストランだ。
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L600 スイート以上のカテゴリーの部屋にはジャグジー付きの大理石製バスタブが備わる。L900スイートでは部屋の3分の1のスペースをバスエリアが占める。
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ホテル総料理長のリチャード・エッケバス氏による極上の食材を用いた創造性溢れるひと皿との幸せな出会いが期待できる。
Ⓒ The Landmark Mandarin Oriental, Hong Kong
My favoriteRestaurantsin Hong Kong
食の都、香港の味
ピエール・ガニエールが導く革新的なフランス料理の世界へ Pierre ピエール
マンダリン オリエンタル 香港の25階にある「ピエール」。セイルハイの窓からビクトリア湾を見下ろす最高のロケーションで最上級のフレンチを堪能できる。
至福の美食の世界への誘い
漆黒の大理石に覆われたアプローチをゆっくりと歩み、メインダイニングへと導かれる。そこには目を見張るようなビクトリア湾のパノラマビューを借景に、クリスタルをあしらった豪華なファブリックとシャンデリアに彩られたドラマチックな空間が広がる。 ここ「ピエール」はマンダリン オリエンタル 香港のシグネチャーレストラン。新感覚のフランス料理の魔術師と呼ばれるピエール・ガニエール氏の香港での拠点となる場所で、年に3度ほど訪れるという。
ピエールはミシュラン2ツ星を獲得する名店であり、彼の愛弟子であるシェフ、ジャッキー・トウブリー氏がキッチンでタクトを振るう。若干29歳でピエールの総料理長に指名されたジャッキー氏は、「芸術を深く愛する」と言い、芸術への情熱を料理に見事なまでに反映する。伝統的なフランス料理の調理法に深く根ざしながらも、独自の感性をエッセンスに表現したひと皿は洗練を極めつつ、親しみやすさも併せ持つのが何よりも魅力的だ。
宝石を散りばめたような夜景を背景に、テーブルの上で繰り広げられる芸術的で独創的な美食の世界。その複雑な味わいをソムリエおすすめの充実したワインと共に堪能したい。
芸術的空間に迎えられる極上フレンチの隠れ家 BIBO ビーボ
アート作品が溢れる店内。奇抜な店内と上質なフレンチとのギャップが人気の秘訣だ。
香港唯一のルレ・エ・シャトー
香港島の上環エリア。坂の上を東西に走るハリウッドロード沿いにひっそりと店舗を構える。下町風情が残る雑踏のなかで見落とされがちだが、金色の扉の先に足を踏み入れると雰囲気が一変。店内の至るところが現代アートで埋め尽くされ、度肝を抜くような異次元空間が広がる。
オープンしたのは3年前の春。ジェフ・クーンズやダミアン・ハースト、バンクシーといった現代アートを代表するアーティストたちの作品がアールデコ調の空間を彩るなか、上質な季節のフランス料理を楽しめるとさっそく話題になった。
エグゼクティブシェフのムータロー・バルドゥ氏が創造する料理は、フランス料理の伝統に敬意を払いながらも、遊び心を持って季節の素材を解釈したもの。その上質な味わいと斬新なプレゼンテーションは各方面から高く評価され、香港で唯一となるルレ・エ・シャトーのメンバーにもなっている。
著名ミクソロジストによる美しいカクテルもビーボでの楽しみの一つ。刺激的な空間で芸術的な料理とカクテルを堪能すれば、香港の最先端のグルメシーンを感じられるはずだ。
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ムータロー・バルドゥ氏の料理はインパクトのある空間と絶妙に溶け合う。
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ダイニングからラウンジ、バーに至るまで現代アートに埋め尽くされる。
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ミクソロジストによるカクテルもアート作品のような仕上がり。
Information
BIBO
163 Hollywood Road, Sheung Wan, Hong Kong
TEL +852-2956-3188 bibo@bibo.hk
http://www.bibo.hk
香港で改めてかみしめる日本の食と文化の素晴らしさ 柏屋 香港 Kashiwaya Hong Kong
空間は和の趣に包まれ、日本にいるかのような錯覚に陥る。カウンター席は個室としての使用もできる(5名様より)。
香港で表現する真の日本の姿
ルレ・エ・シャトーのメンバーである大阪の日本料理の名店、柏屋 大阪千里山が、日本ならではの四季の愉しみを異国においても心ゆくまで味わってもらいたいと、一昨年、満を持して香港に開業した店。
ロケーションは香港島の中心、セントラル地区に構えるザ・ランドマークマンダリンオリエンタル香港のほど近く。店内は京唐紙「唐長」十一代目の千田堅吉氏による作品で彩られ、壁には陶芸家で画家でもある辻村史朗氏の墨絵が飾られる。さらに日本を代表する染織家である吉岡幸雄氏の手による室礼と、香港にありながらにして、まるで日本にいるかのような和の趣が印象的だ。
料理は日本の伝統に現在の趣向を凝らした懐石料理が中心。一連のコース料理を通じて季節の物語を表現しながら、「心が遊ぶ時間」を提供している。
大阪の柏屋で20年にわたって研鑽を積んできた料理長が、異国の地で繰り広げる柏屋ならではの世界観。その深い味わいは、異文化のなかにあるからこそ、いっそう際立つようである。