Gourmet in Hawaii

現在、ハワイのレストランは世界中の美食家を唸らせている。ミシュランスターシェフが店をオープンし、世界中から旅行者が集い、料理やサービスが洗練され、ハイエンドレストランも急激にその数を増やしている。今回は、自他共に認めるハワイ随一の食通、ショーン・モリス氏が厳選したハイエンドレストラン5件を紹介する。

Sean Moris ショーン・モリス
ハワイ在住。ホノルルにて多くの顧客を持つPR会社の代表を務める。ハワイでは美食家、ワイン愛好家として知名度も高く、自身の持つ情報を、日本をはじめ様々なメディアへ紹介している。

 

究極の江戸前鮨を食す すし匠

日本で最も影響力のある江戸前鮨職人の一人といわれる中澤圭二氏が、ハワイの「リッカールトン・レジデンス・ワイキキ・ビーチ」に店を開い たのが2016年。日本人のみならずハワイ在住の食通の間で話題を呼び、現在ハワイで最も予約が困難なレストランのひとつとなっている。
なぜ、日本を飛び出して、ハワイで鮨を握ることになったのか。中澤氏はこう答えてくれた。
「今の日本は恵まれすぎている。ネタを仕入れに市場へ行けば最高の食材が手に入る。良いお客様に恵まれて、旬のネタを握ればそれで幸せだけ れど、その先を考えた時に何か違うかなと考えるようになった。これからの人生は自分の背中を見せて江戸前鮨の伝統を伝えたい。それが、15歳からこの世界で生かしてもらった恩返しかな」。
そして、一から始めるために選んだのが、縁のあったここホノルルだった。初心にかえり、ハワイ産の魚を自身の目と感性で仕入れて江戸前鮨に仕上げる。ハワイならではの、新たな食材と対峙することが楽しいという。中澤氏の職人としての鋭い眼差しは、さらなる高みを目指す求道者のよう。メインカウンター10席と別室6席にて中澤氏が極めた「おまかせ」スタイルを堪能したい。

右/ハワイ産の芋を原料とした焼 酎「波花」のすし匠オリジナル。 中/オパのハラスにシトラスキャビアを乗せた一品。 左上/かつてハワイの王族しか食べることのできなかった魚「モイ」を寿司の原点である飯い寿ず司し として仕上げる。 左下/「すし」の世界への恩返し、と語る中澤圭二氏は、自身の経験とその姿勢を後継へ伝える。

 

Information

すし匠

The Ritz-Carlton Residences Waikiki Beach, 383 Kalaimoku St, Honolulu

TEL +1-808-729-9717

http://www.ritzcarlton.com/jp/hotels/hawai/waikiki/susi-sho

 

ハワイのグルメを新たなステージへ誘う Senia

ハワイのグルメシーンを一変させたと話題のレストランが、ホノルルの オールド・ダウンタウンの一画にある「セニア」。この店のシェフは、ホノルルの会員制レストランの初代料理長を務めたクリス・カジオカ氏と、NYの3つ星レストランでの経験があるアンソニー・ラッシュ氏。この2人がNYのレストランで共に働いていた時に意気投合し、2016年にセニアをオープンさせた。
店内はセンス良くデザインされたNY・ソーホーのアートギャラリーのよう。古い建物が軒を連ねるこのエリアに、とてもマッチしている。
提供される料理も斬新で、センスを感じさせる。NYのミシュランレストランの洗練とヨーロピアン、さらにアジアの伝統料理をハワイ産の食材を中心にアート作品のような盛り付けで楽しませてくれる。
キャベツをフライにしてほんのり焦がし、それをミルフィーユのように重ね、スーパーフードのモリンガをパウダーとして盛り付けた「チャード・キャベジ」がおすすめ。見た目は落ち着いた鶯色だが、口に運ぶと見た目のイメージからは想像できない一皿で、甘味と苦味が見事に融合した絶品。ハワイの旬を明るく楽しい雰囲気の店内で味わいたい。

見た目はフランス料理を思わせ、色味は日本の苔のような一皿。これが最新のパシフィック・リムだと実感させられる。

左上/「綺麗、楽しい、美味しい」がコンセプト。オープンしてわずか3年で、ハワイで最も予約の取れない人気店に。 左下/大きく開放的なオープンキッチンからはライブ感が伝わる。 中/どの料理も盛り付けが美しく、食べる前に目でも楽しめる。 右/ハワイのレストランに新風を巻き起こした2人のシェフ。

 

Information

Senia 75 N King St, Honolulu

TEL +1-808-200-5412

http://restaurantsenia.com/

 

ミシュランスターシェフが手がけるステーキハウス
STRIP STEAK

ハワイで必ず食べておきたい料理の一つとして挙げられるのがステーキ。アメリカ本土から多くの観光客が訪れるハワイにはたくさんのステーキハウスがあるが、「ストリップステーキ」はそれらとは一線を画す。アメリカのミシュランスターシェフのマイケル・ミーナ氏が手がけ、ラスベガスとマイアミに続き、ハワイに進出した。
特徴は肉の種類と素材の良さ。全米トップクラスのレストランと同じ仕入れルートにより、肉質に絶対の自信を持つ。マイケル・ミーナ氏がこだわるのは、酸味と甘み、スパイスと脂肪のバランスだ。シグネチャーメニューのトマホークステーキは、溶かしたバターで香味野菜とともにゆっくりと焼き、仕上げに表面を高温で焼いて焦げみを出し、肉の旨みを最大限に引き出す。
ステーキ以外にもシーフードや地元産の野菜を使ったメニューなどもあり、食事以外にもバーとしても利用できる。
広く開放的な店内同様テラス席も充実。気軽に利用できるハイエンドなステーキハウスというコンセプトが、忠実に表現されている。

左から/ステーキだけでなくシーフードや和食もある。 35日間熟成のトマホークステーキは、その大きさに驚くがジューシーで柔らかい。

左上/店内は1人でも気軽に入れる雰囲気。 左下/格式張らずに誰でも食事を楽しめる店が理想と、店長のジョセフ氏。 右/「マイケルズ・アヒ・ツナタルタル」は、トーストに乗せて食べる新感覚のタルタル。

 

Information

STRIP STEAK

INTERNATIONAL MARKET PLACE330, Kalakaua Ave, Honolulu

TEL +1-808-800-3094

https://www.michaelmina.net/restaurants/hawaii/stripsteak-waikiki/

 

銀座から世界へ羽ばたく本物の鉄板焼
銀座 おのでら

美味しかったよりも、楽しかったと言ってもらえることを大切にしたい-。その言葉は、味には絶対の自信があるという裏返しなのだろう。
銀座の名店「おのでら」を、そのままハワイに作ったという店構えは、内装から食器まで細部にこだわる。引き戸を開けて店内へ入ると、室内は磨き込まれた鉄板を設えたコの字型のカウンターの前にの席があるのみ。無駄を削ぎ落とし、凛と研ぎ澄まされた雰囲気の中で、食事をいただく。
焼き手の所作に始まり、油の跳ねる音、肉の焼ける香り、口の中で広がるうまみ。それらを目で見て舌で味わいながら、五感を研ぎ澄ませ、最高級の神戸牛や短角牛をいただく至福。ハワイで初めて神戸牛の取り扱い認定を取得し、オーガニックのレタスを地元農家にお願いして水耕栽培してもらうなど、最高の食材を揃えることに最善を尽くす。
鉄板焼レストランという枠を超えて、和牛や日本の食文化を伝えることが使命だと語る佐藤慎吾シェフ。その言葉通り、連日たくさんの外国人セレブが本物の和牛を求めて来店する。

左から/神戸肉や短角牛など本物の和牛にこだわり、野菜なども最高の食材を揃えている。 美しい盛り付けが際立つ、前菜の「短角牛モモのたたき」。

左/昨年からシェフを務める佐藤慎吾氏は、「銀座おのでら」を世界へ発信している。 右上/肉の旨みを閉じ込めて焼き上げる鉄板焼の醍醐味を五感で味わう。 右下/店内は「銀座おのでら」そのままの雰囲気が漂う。

 

Information

鉄板焼 銀座 おのでら

1726 S.King Street, Honolulu

TEL +1-808-784-0567

https://onodera-group.com/teppanyaki-hawaii/

 

特別な場所で過ごす最も贅沢な時間
Vintage Cave Club

ロケーションの意外さに誰もが驚くことだろう。アラモアナセンターの駐車場の一画に、見つけるのに多少時間を要する「ヴィンテージ・ケーブ・ クラブ」のプレートが掲げられた重厚な扉がある。
インターホンで来店を告げると扉が解錠され、専用のエレベーターで店へと向かう。以前は会員制だったのだが、現在は紹介もしくは事前予約 があれば入店を許される。
この店のために特別に焼かれた煉瓦で作られた店内には窓がなく、外光が一切はいらない。壁にはピカソやダリなどのオリジナルの名画が掛けられていて、ベネチアングラスのシャンデリアの光が店内を灯し、妖艶な雰囲気を醸しだす。
選び抜かれたヴィンテージワインとともに世界中から仕入れられた最高の食材を、日本人の相馬シェフが極上の一皿へと仕上げる。寿司カウンター付きの個室をはじめ、趣向の異なる部屋が用意されているので、人数や用途によって使い分けられる。会員になれば専用のワインセラーにボ トルを保管しておくことも可能だ。
世界の名画に囲まれて、名だたるヴィンテージワインや銘酒とともに時を過ごす。今までのハワイにはなかった、新たな世界の扉を開いた特別な場所である。

左上/最高の食材が彩り豊かに盛り付けられる。 左下/日本人シェフの相馬氏の巧みな技で創り上られるフレンチと和食の饗宴を楽しみたい。 中/「和牛煉瓦焼き」は、熱した煉瓦に乗せて好みの焼き加減で食す。 右/ロマネ・コンティをはじめ、名だたる銘酒が揃う。

 

Information

Vintage Cave Club

1450 Ala Moana Blvd. Ste.2250 Honolulu

TEL +1-808-441-1744

http://vintagecave.com