鎌倉駅前の雑踏を抜けた閑静な住宅街の一画。風格ある門をくぐり、緑に囲まれたアプローチの先に瀟 洒な洋館が佇む。鎌倉の街をずっと優しく見守ってきた、そんな歴史の重みを感じさせる築103年の邸宅を再生したフレンチレストラン『古我邸』だ。
運営を手がける新井達夫さんがこの邸宅と出合ったのは、一サラリーマンとしてウェディング事業に関わっていた時のこと。それから起業し、オープンにこぎつけるまで7年もの歳月がかかったという。
「この敷地と建物を見た瞬間に、二度と巡り会えない物件だと思ったんです。でも勤めていた会社はリスクを考え計画は断念。だったら自分の手でここをなんとかしようと」。
通常、住宅街ゆえレストラン営業は認められないが市役所に通いつめ交渉。古い建物だから修復工事も開けてみないと皆目検討もつかない状況。苦難続きで、さぞや 大変だったに違いない。
「一度も嫌になったり、あきらめるっていう感覚がなくて。ただやりたいからやる。もともと古い建物や街並みも好きではあったけど、そこに強い思い入れがあるというよりは、100年前に作られたこの家が、現代に甦って、点と点が結びついた、そこに喜びを感じるんですよ。よく「古い建物を守っていて素晴らしいですね』と褒めていただくんですけど、100年前のものを修復して今使えるようにしたことよりも100年先にも残っているよう守り続けることを評価してもらえるほうが嬉しいですね。100年先、この家がどうなるかは想定もできないし、見る機会もないですけど、後世の人に『いい仕事したな』と思ってもらえたら、と。そんな思いでここを作った意識が強い。それは『ルイ13世』の造り手も同じだと思います。『ルイ13世』 は100年前の希少なお酒という点で称賛する人も多いでしょうけ れど、僕は100年先のものを造っている造り手に素晴らしさを覚えます。受け継いできた伝統を守りつつも新しい風を吹き込み、100年先へ夢を託す。彼らも完成品を味わうことはできないけれど、後世の人たちがこのお酒で幸せに満ちたりる姿を想像しながら、ただ目の 前にある仕事を一生懸命こなすだけ。それが次世代へのメッセージとなるんだから粋だよね」。そう語りながら、『ルイ13世』のグラスを傾け、「鼻で嗅いだ香りと口に含んだ香りが違いますね」と。セラーマスターはテイスティングを繰り返し、厳選した1200種の原酒をブレンド。長期熟成された『ルイ13世』ならではの余韻が続くほのかな甘味と複雑な香りや味わいに陶酔のご様子。
「僕は仕事をしている時、たいてい自信満々でやっているんだけど、たまにこの方向性であっているのかって自問自答することもある。そういう時に『ルイ13世 』を飲みたい。なぜならセラーマスターも重責を背負って迷うことはあっても、100年後の完成形を思い描きながら自信を持って継承し続けているお酒。迷ったときこそ、僕は間違ってはなかったなって勇気づけられる気がします。こういう秘めたるパワーを持つお酒を若者にも飲んで欲しい」。
『ルイ13世』は成功者の証でもあり、達成感に浸りながら飲む方も多いが、新井さんのように自信をつけさせる美酒でもあり、多彩なシーンに影響を及ぼす存在なのだろう。300種の香りがあるとされるさまざまな表情を持つ最高級コニャックは、飲んだ時の香りと、飲んだ後に鼻から抜けていく香りがわかるようになったら一人前だそう。それを聞いて「まだまだ僕は半人前だね」と目を細め、さらに言葉を続けた。
「僕はワインが好きだけど、蘊蓄と か味わいとか詳しいわけではない。 でもレストランで恥ずかしい思い はしたことがない。若い男の子が ガールフレンドを高級レストランに誘ったものの、不慣れで勝手がわからない。でもお店側はさりげない気遣いで彼がスマートにエスコートできるように演出して、2人にとって最高の思い出となる。それがレストランだし、男に自信をつけさせてくれる場所だなと思う。店側は受け止めるから大丈夫、もっと気軽にレストランへ来て、お酒も飲んで格好良い男になって欲しい。そのきっかけになるのがこの『古我邸』だったらうれしいですね」。

Profile

b.note 代表取締役

新井達夫 さん

大学卒業後、藤田観光に就職。青山でゲストハウス・ウェディング のプロデュースを手がけたのを 機に、2009年起業。古我邸をはじめとする飲食店・ウェディング施設・ホテルの企画、開発、運営を行う。

ルイ13世　希望小売価格 ¥315,000（税別）

Information

レミー コアントロー ジャパン株式会社

TEL 03-6441-3025

http://louisxiii-cognac.com