GALERIE PERROTIN ペロタンギャラリー – 個性が集まるギャラリー
Etsuko Nakajima 中島悦子 (左)
仏ソルボンヌ美学史修了。カルティエ財団入職時にアーティスト合田誠氏や村上隆氏と出会い、以後コンテンポラリーアートの世界に深く関わることになる。2002年フランスのエマニュエル・ペロタンギャラリーに入社。2011年、正式にペロタンギャラリー香港を設立し5月にオープニングを迎える。
Alice Lung 龍玉 (右)
韓国ソウルで生まれる。米ジョージタウン大学で財務会計を学び非営利企業のコンサルタントなどを務め、2007年Gana Gallery(韓国)に入社。2010年11月よりペロタンギャラリーの設立に参加。香港から世界に向けてアートの革新を発信する。
パリのコンテンポラリーアート・シーンを牽引するエマニュエル・ペロタンギャラリーが、今年5月香港の中環にGALERIE PERROTIN(ペロタンギャラリー)オープンさせた。
アールデコ調のクラシックな高層ビルの17階にあるペロタンギャラリー。展示スペースの奥には、長い回廊とビクトリア港を一望する景観が広がる。こういうスペースは他ではあまり見たことがない。「すごい景色でしょ。裏にはビクトリアピークが見えるんですよ」と説明してくれたのは、ペロタンギャラリー・ディレクターの中島悦子さん。
いま香港の不動産は日本よりも高額です。さらに中国にとってアートギャラリーは謎の存在だったので、なかなか理解を得られず場所を見つけるのに苦労しました。この場所を見つけてすぐアンドレ・フー氏(本誌2011年7月号参照)にデザインを依頼。ビル・オーナーの意向で窓を塞ぐことができなかったのですが、アンドレがこの景観を活かした個性的なギャラリーに造り上げてくれました。そして5月にはアンドレ、オーナーのエマニュエル・ペロタン、そしてアーティストのファレル・ウィリアムスなどが集まって盛大なオープニングを迎えました。
ギャラリー開設にあたり、中島さんは居心地よさにこだわった。
ここを面白い人たちが集まるスペースにしたいですね、昔のサロンのような。香港をはじめアジア、アメリカ、ヨーロッパのさまざまなバックグラウンドを持った人たちが集まり、ここからアートを発信したい。
私たち(ギャラリスト)の使命は、良い若手アーティストを育てること。将来有望な若手はたくさんいます。だから私たちが何かムーブメントを起こしていかないと。
その新たなムーブメントとして、パリのストリートアーティストJRのインスタレーション作品を突如、中環のオフィス街に出現させた。
コンテンポラリーアートはプロセスが面白いんです。作品の背後にある人間ドラマに魅力が詰まっています。JRのインスタレーションのように、ひとつの作品からメッセージが広がり、やがてまったく知らない誰かに影響を及ぼす。こういったムーブメントには非常に興味があります。もはやネットワークで世界中がつながっているので、今後はアートとITのコラボレーションも実現してみたいと考えています。
世界の距離がどんどん縮まるなか、今後はアート作品を所有するのではなく、例えば世界の美術館に自分の作品を置くなど、シェアしていく動きも出てくると思います。私の作品も世界中の美術館に置いてみたい。そうなったら、面白いですよね。
もうひとりのディレクターのアリスさんは、金融業界からアートに転身。
世の中のものの大半は規則的だけど、アートは自由で民主的でとても刺激にあふれています。香港はまだアートの知識が希薄なので、私たちが導いてあげる必要があります。だからといってパリで流行したものを、そのまま持ってくることはせず、香港の中に生きたコンテンポラリーアートを根付かせたいと思っています。
香港の美術館はインパクトを作りません。例えなにか動いたとしても、時間をかけすぎて情熱が消えてしまう。だから私たちが頑張って伝えていかなければいけません。香港のアート・シーンは、私たちがこれからどんどん面白くしますよ!
左/フランス人アーティストJRがパキスタンで行ったインスタレーション作品。Inside Out,Naplouse, Palestine – 2011 Courtesy:jr-art.net / Galerie Perrotin, Hong Kong 。
右/ギャラリー注目のインドネシア人アーティスト、J. AriadhityaPramuhendraの作品。すべての作品がアーティストの自画像で強い存在感を放つ。
JR “Pattern”展、Peter Zimmermann “D.R.O.P.”展
※ともに11月10日まで開催中
GALERIE PERROTIN
50 CONNAUGHT ROAD CENTRAL, 17th FLOOR, HONG KONG
TEL +852-3758-2180
www.perrotin.com
アート・コレクター Henry Yu ヘンリー・ユ – アートが伝える幸せ
いまいちばんのお気に入りだという指江昌克の作品とヘンリー・ユ氏。コンテンポラリーアートの中でも、とくにペインティング作品に魅かれるというヘンリー氏のギャラリーには、Damien Hirst、Budi Kustarto、草間彌生、村上隆、Carrie Chau、Liu Yeなど世界中のアーティスト作品が揃う、とても居心地のよいスペース。
活気を帯びる香港のコンテンポラリーアート・シーン。それを香港では、どのように受け止めているのだろうか。アート・コレクターのヘンリー・ユ氏にコレクションや現在の香港アート・シーンについて伺った。
香港島を南に下ったウォーターフロント(Ap Lei Chau /アプレイチャウ)。都市部の喧騒から離れた工業地帯に、ヘンリー・ユ氏の倉庫がある。アート・コレクターであるヘンリー氏は、ビルの一室を個人ギャラリーに改装し集めた作品を展示している。
かつてここは工業地帯でしたが、いまは空きビルをデザインオフィスやアーティスト、フォトグラファーがアトリエとして使っています。さまざまなクリエイターが集まって、さながらアーティスト村ですね。
ここには40点ほどの作品を置いており、月に2~3回ほど訪れます。ここに来て作品を見ていると、本当に落ち着きます。仕事で嫌なこととかあっても、すべて吹き飛んじゃいますよ(笑)。
私はコンテンポラリーアートが好きです。ヨーロッパやアメリカのアーティストより日本人アーティストの作品に魅かれますね。なにか私たちの生活に根付いている感覚があります。いまいちばんのお気に入りは、指江昌克の作品。この緻密な描写は、どこか香港を思わせます。草間彌生も好きなアーティストのひとりです。彼女の作品を見ていると、とても幸せになります。フェルナンド・ボテロ(コロンビア)のようなファインアートも好きですが、コンテンポラリーアートは私たちにとってとても分かりやすいアートです。ストーリーがあり、技術や創造力、メッセージも含まれていて、それを読み解いていくのが本当に面白い。
香港のアート・シーンはまだまだ遅れているとヘンリー氏は言う。
2008年の香港アートフェア以降、コンテンポラリーアートの人気が一気に高まり、ここ数年でギャラリーの数も増えました。現在では香港はアジアのアートマーケットの核として世界から注目されています。その反面、香港政府はアートをサポートしないという現実もあります。香港には美術大学もないんですよ。国内でアーティストとして活動している人たちは決して裕福とはいえないし、アートで成功するのは非常に困難です。香港ではアートマーケットが確立しています。それに世界からギャラリーが集まってきているので、いつか香港人アーティストが世界に紹介される日を待ち望んでいます。
中国の習慣では、コレクションは自分だけが楽しむもの。あまり他の人には見せたがらないそうだ。
みんな自分の趣味は、なかなか人には明かしません。だからコレクター同士の交流もあまりありませんね。数年ぶりに会った友だちとたまたまアートの話になり、お互い同じアーティストが好きで作品も持っていることがわかって驚きました(笑)。そしてとてもうれしくなりました。
アートは人を幸せにしてくれます。私も、どれだけアート作品に幸せをもらったかわかりません。だから私のコレクションを多くの人と分かち合って、みんなに楽しんで幸せになってもらいたい。私の好きなアーティストの作品を多くの人に紹介し、作品の魅力を感じてもらう。そうすることで、いままでたくさんの幸せをくれたアーティストに恩返しができればと思っています。
Henry Yu (ヘンリー・ユ)
財務コンサルタント。幼少期に両親とのヨーロッパ旅行で訪れた美術館の絵画に感銘を受け、以来アートに魅せられる。最初に購入した作品はCarrie Chau(香港人アーティスト)の作品。それがとても気に入りアートフェアやギャラリーに足を運んでいるうちに三潴末雄氏(ミヅマアートギャラリー ディレクター)と出会い、日本のコンテンポラリーアートに興味をもつ。年に1~2回は日本を訪れ、アーティストに会ったり作品を購入している。140点以上のコンテンポラリーアート作品を所有。
CHRISTIE’S クリスティーズ香港 – 世界をつなぐ国際都市のオークションハウス
世界経済が収縮するなか、成長を続けるアジアのアートマーケットの支柱となり、未来のトレンドセッターとしての役割も担う香港のオークションハウス、クリスティーズ香港。ニューヨーク、ロンドンに続く規模のオークションを開催するクリスティーズ香港のスペシャリストが、オークションの魅力を語る。
交渉が実る瞬間がもっともエキサイティング
Vickie Sek (ヴィッキー・セック)
5月のオークションは、ハリー・ウィンストン製ピンクダイヤモンドリングが1億35百万HKドル(約14億2千万円)で落札されるなど、大成功を収めました。欧米の経済が不安定な状況のなか、香港は非常に好調だと言えるでしょう。
私たちスペシャリストは、世界中をまわって出品作品を探します。長い時間をかけてコレクターと信頼関係を築き、出品や落札について交渉が実る瞬間がもっともエキサイティングですね。
日本には、これまで100回以上は訪れました。いまでも年に10日は滞在します。日本には、バブル期以前に素晴しいジュエリーを購入した目利きのコレクターがたくさんいらっしゃいます。過去に最高落札価格をつけた翡翠のネックレスも日本からの出品でした。日本はとても重要なマーケットです。
私が兄の勧めで宝石の世界に入って30年以上が経ちます。最初は独学で知識を身につけ、審美眼やお客様とのコミュニケーション能力などを磨いてきました。宝石などの高額商品をデパートや専門店で購入される方は多いと思いますが、オークションも売買の場として、どなたにもご利用いただけます。私たちは希少品ばかりを扱っているわけではありません。日本での市場価格を把握していますし、品揃えも豊富です。私も年に数回は日本を訪ねて、売買のご相談を承ったり、下見会で宝石をご覧いただいたりしています。宝石の売買をお考えの方は、是非、一度クリスティーズにご相談ください。オークションならではの逸品が見つかると思いますよ。
Vickie Sek (ヴィッキー・セック)
クリスティーズ香港
宝石・翡翠部門 総責任者香港生まれ。ダイヤモンド選別士としてキャリアをスタートさせ、1977 年に香港の高級宝飾店に入社しマネージャー兼バイヤーとしてヨーロッパやアメリカと強いコネクションを築く。その後1994年クリスティーズのジュエリー・スペシャリスト就任。以来、クリスティーズ・アジア地域の宝石部門は飛躍的な成長を遂げる。2009年11月の香オークションではピンクダイヤモンドが83.5百万香港ドルという最高落札価格を記録。
スペシャリストは時計の歴史400年に精通していなければなりません
Sam Hines (サム・ハインズ)
クリスティーズの時計オークションは、ジュネーブ・ニューヨーク・香港で各2回ずつ、合計年6回行われます。そのなかでも香港はモダンウォッチ市場としてとても重要です。モダンウォッチを厳密に定義するは難しいのですが、1985年以降の時計をそう呼んでいます。5月のオークションでは40ヶ国1千近い参加者があり、非常に好調でした。香港ではモダンウォッチに限らずポケットウォッチ(懐中時計)も人気です。数年前までは大きなサイズの時計に人気が集まっていましたが、いまはテイストが落ち着いて、プラチナやイエローゴールド、ピンクゴールドのケースが好まれます。レディース・ウォッチも好調で、女性のお客様でパテック フィリップをいくつもお持ちの方もいらっしゃいます。
時計には400年の歴史があり、スペシャリストはすべての年代に精通していなければなりません。お客様の知識も豊富で、最近のオークションカタログには詳細な情報を掲載しています。
私が見つけてきた時計を落札されたお客様に満足していただくことが、なによりの喜びです。11月に東京のクリスティーズで開催するプレビューでは、約60本の素晴らしい時計を展示しますので、お楽しみに。
Sam Hines (サム・ハインズ)
クリスティーズ香港 時計部門部長
時計メーカーでキャリアを積んだ後、1997年ロンドンでオークションの世界に入り、2005年クリスティーズのインテリア部門のマネージャーに就任。その後パテック フィリップ社において高級機械時計の知識を深め、2008年クリスティーズ・アメリカの時計部門統括責任者に着任する。アジア部門も同時に統括していたハインズ氏は、香港において2010年6月21.1百万米ドルの総売上を達成。これは香港で行われた時計部門のオークションの最高売上として記録されている。2011年9月、アジア地区の時計部門の責任者に抜擢される。
クライアントと同じ情熱をもつことが必要
Pola Antebi (ポーラ・アンテビ)
中国には5千年の歴史があります。そしてその時間だけ美術の歴史があり多様性に富んでいるので、とても興味深いですね。私が扱う美術品には宮廷のためにつくられたものも多く、質の高い作品が揃っています。オークションでは、よく知られた美術品が出品されることが多々ありますが、中国美術では世間に知られていなかった名品が毎回のように出品されるのでワクワクしますね。この仕事では、美術品に対してクライアントと同じ情熱をもつことが求められます。私も名品と巡り合った時には心から感動します。
私は香港だけでなく、アジア全域から出品作品を集めています。例えば、17世紀後期、明時代の家具は美しく、現代のライフスタイルにとてもよく合います。ヨーロッパのアンティーク家具に比べると比較的リーズナブルで、おすすめです。
日本には、たくさんの素晴しい中国美術が存在します。2008年には東京・青山の根津美術館のコレクションが出品され、大成功を収めました。出品されたのは18世紀から19世紀初頭にかけて、宮廷のために作られた見事な置時計15点で、どれも贅を極めた装飾と繊細なからくりが施された美しいものでした。今年5月にも、日本から出品された元代の染付の大皿が、そのオークションでの最高額で落札され、トップロットとなっています。長らく日本で所蔵されていた中国の美術品は、作品の質だけでなく状態も良く、香港オークションで人気を集めています。
Pola Antebi (ポーラ・アンテビ)
クリスティーズ香港
中国陶磁器・美術部門 部長
米バーモント大学で美術史とフランス文学の学位を取得。1986年クリスティーズ香港設立メンバーのひとり。これまで27年以上に渡り中国美術に携わってきたアンテビ氏は、クリスティーズがアジアでの礎を築くための重要な役割を果たす。2000年中国陶磁器・美術部門の部長に就任。以来、同部門の売上が11百万米ドル(1998年)から2億33百万米ドル(2010年)へと飛躍的に上昇。これまでにロバート・チャンコレクションの皇室磁器や李家コレクションの漆器など、中国美術史における重要作品を取り扱う。
香港オークション・プレビュー
クリスティーズ香港は、秋季オークション( 11月23~28日)に先駆けてアジア9都市を巡回する「香港オークション・プレビュー」を実施します。オークションの出品作品を各地で展示するもので、東京ではザオ・ウーキーやジャン・シャオガン(ともに中国)といったアジアを代表するコンテンポラリーアーティストから、中国陶磁器や漆器などの古美術、パテック フィリップやオーディマ ピゲといった複雑時計、貴重なエメラルドのイヤリングを含むジュエリーなどの逸品が展示されます。
珠玉の作品が一堂に介する「香港オークション・プレビュー」。東京では11月6(火)・7日(水)に開催されます。幅広いセレクションの数々に触れるプレビューは、美術館やギャラリーとは異なる貴重な体験になるでしょう。
クリスティーズ 香港オークション・プレビュー
日時:2012年11月6日(火)11:00~16:00、11月7日(水)11:00~19:00
会場:株式会社クリスティーズジャパン
東京都千代田区丸の内2-1-1 明治生命館4F
TEL 03-6267-1766
*ご来場の際は招待状が必要となりますのでクリスティーズまでお問合せください。
Christie’s Hong Kong Limited (クリスティーズ香港)
22nd Floor Alexandra House, 18 Chater Road, Central, Hong Kong
TEL +852-2760-1766
www.christies.com
オークション会場:香港コンベンション&エキシビションセンター
香港から世界へ ゆとりのエアライン
世界をつなぐハブ都市、香港
「なぜ香港が他の都市よりも優れているのか」。この問いに、香港に住むビジネスエリートの大多数が口を揃えて答える。「香港は世界のどの都市にアクセスするにも便利なハブ都市だから」。
国際航空拠点である香港をベースに、世界42の国と地域、168都市へとネットワークを広げるグローバル・エアライン、キャセイパシフィック航空。日本から香港へは、東京(成田・羽田)、大阪、名古屋、福岡、札幌、沖縄の各都市から、合計週120便以上(台北経由便、香港ドラゴン航空とのコードシェア便を含む)を運航している。日本からの直行便だと、わずか4時間程度で魅惑の都市に到着。香港でビジネス・バケーションを終え、次の都市への移動も容易に行える。
「ワールド・ベスト・ビジネスクラス賞」受賞
機上では、キャセイパシフィック航空のビジネスクラスが快適な旅路を約束。昨年より順次導入中の新ビジネスクラス(長距離路線用)は、乗客のフィードバックを基にコスト効率と快適性、プライバシーのバランスを最適化した。その結果、毎年恒例となっているスカイトラックス社ワールド・エアライン・アワードにおいて、「ワールド・ベスト・ビジネスクラス」賞を受賞。モダンなパーテーション形状で区切られたプライベートエリアは、可能な限り広いスペースを確保するようにデザインされている。さらにシートは、リラックスポジションからフルフラットベッドまでボタンひとつで調節可能。まさに雲上のリムジンだ。
上質な本格中華料理メニューを楽しむ
フライトの楽しみのひとつである機内食。キャセイパシフィック航空では、香港発の一部の長距離路線のビジネスクラス、プレミアム・エコノミークラス、エコノミークラスで「キャセイパシフィック・シグネチャー・チャイニーズ・ディッシュ」を用意している。11月からは、香港発日本路線のビジネスクラスにも導入の予定。本格中華料理のレシピと伝統の味を踏襲した特選中華料理メニューは、熟練の料理専門家が手掛けたスペシャル・メニューだ。香港ならではの味と中華料理の伝統が、ふんだんに盛り込まれている。
快適な空間と特別メニュー、そして上質なサービスを提供するキャセイパシフィック航空のフライト。さあ香港に出掛けよう。