ASIA FASHION EXCHANGE 2012
シンガポールから発信するファッションの新潮流。3回目となるアジア・ファッション・エクスチェンジが、シンガポールで開催されました。成長を続ける国の勢いをそのままに、賑やかに華々しい1週間となりました。
アジアのファッションリーダーとしての存在感を増すシンガポール。
国を挙げて熱狂するアジア最大のファッションの祭典が今年も開催された。
ZAC POSEN – A/W 2012
シンガポールきっての目抜き通り、オーチャードロードは、アジアのファッションシーンにおけるシンガポールの立ち位置を象徴しているかのよう。街路樹に覆われた美しい大通りには、「アイオン オーチャード」や「パラゴン」といった高級ショッピングモールが建ち並び、中国本土をはじめ、マレーシアやインドネシアといった周辺諸国からショッピングに多くの観光客が訪れる。その賑わいからは、シンガポールが東南アジア、ひいてはアジアに向けての中心的なショーケースの役割を果たしていることを実感することができる。
アジアにおけるファッションのリーダーとなるべく取り組みは、国を挙げて進められるのがシンガポールらしい。その代表的なイベントが「アジア・ファッション・エクスチェンジ(AFX)」だ。今年で3回目を迎えたアジア最大級のファッションの祭典は、地元の民間企業の主催のもと、シンガポール政府観光局、シンガポール規格生産性革新庁、国際企業庁、シンガポール・ファッション協会など、政府とその関係機関の支援を受けて開催。5月14日から20日までの期間中、国中が華やかな空気に包まれた。
ROLAND MOURET – A/W 2012
今年のAFXは、ゲストデザイナーとして招かれたミュグレーによる、2012年秋冬コレクションのオープニングショーで幕を開けた。AFXでは、このミュグレーをはじめ、ザック ポーゼンやローラン ムレといった世界トップクラスのブランドによるショーを中心とした「アウディ・ファッション・フェスティバル」をイベントの目玉として展開。そのほか、国内外100以上のブランドの2013年春夏シーズンものが一堂に会す合同展示会「ブループリント」、才能ある新人デザイナーの発掘を目的とした「スター・クリエイション」、そしてファッション業界関係者に向けたカンファレンス「アジア・ファッション・サミット」の4つのカテゴリーに分けられ、様々な角度からファッションの今が世界に向けて発信された。
AFXの特徴のひとつに挙げられるのは、興味のある人ならば誰でもその美しいファッションの世界を体感できるということ。例えば、アウディ・ファッション・フェスティバルは、一般消費者向けのショーとのスタンスを取っており、ランウェイの最前列を占める国内外の各界の名士や著名人にまじって、世界一流ブランドのコレクションを鑑賞することができる。また、合同展示会では、バイヤー向けとは別に、一般消費者向けに「エンポリウム」の日を設定。シンガポールほか、周辺国から選ばれた100以上の新進ブランドのサンプルを購入できるなど、みながファッションを楽しめる仕組みが盛り込まれている。
オーチャードロードがアジアのファッションの消費の中心とすれば、AFXはその発信の場。通りの賑わいとAFXの熱気を目の当たりすれば、シンガポールがアジアのファッションハブとして、確固としたポジションを手にする日は、そう遠くはないと感じるはず。シンガポールのファッションシーンに、今後、さらに目が離せなくなる。
FASHION FUTURE NOW
RAOUL interview
10年目を迎えたシンガポール発のメンズ&レディスファッションブランド「ラウル」。良質な生地を用いたレトロモダンなデザインを特徴とし、シンガポールからアジアへ、さらに世界へ向けて積極的にグローバル展開を進めている。そのデザイン・ディレクターを務めるオディル・ベンジャミン氏に、地元シンガポールのファッションに対する思いを聞いた。
ラウルは第一回からAFXに参加してきました。
毎年参加して感じるのは、すべてが年々向上しているということ。参加者の数も増えているし、国内だけではなく、海外からのメディアの数も増え、注目度も上がってきていることを感じます。参加ブランドのラインナップもバランスが取れています。ミュグレーやザック・ポーゼンといった国際的なブランドのなかで、今後、ますますの活躍が期待されるブランド、例えばヨージン・バエやティモ・ウィランドなどがとても新鮮に映りました。どのブランドも素晴らしいショーを見せてくれたと思います。
現在、シンガポールのファッション業界には勢いがあります。
アジアに進出しようとする海外ブランドにとって、シンガポールは最適なスタートポイントになっています。30年ほど前から、シンガポールには近隣の国々から多くの観光客がショッピングを目的に訪れるようになりました。そのため、アジアの国、とくに中国や香港、インドネシアやマレーシアで展開したいブランドには、ブランドの力を試すのに最適な場所になってきたわけです。アジアのファッションのゲートウェイとしての役割を担ってきたことで、シンガポールのファッション業界が活発化したのだと思います。
ラウルを展開するFJベンジャミン社は、AFXのイベントの一つである若手デザイナーのコンテストの優勝者に、同社での研修の機会を提供しています。
FJベンジャミン社は、シンガポールを拠点におよそ55年の歴史を持つアパレル会社です。セリーヌやジバンシー、ギャップといった海外ブランドの、東南アジアにおけるマネジメントも行っていて、商品がお客様の手に届くまでのすべてがここでは経験できます。このプロセスを才能ある若いデザイナーのために活かしてほしい。そんな思いから研修の機会を提供するようになりました。今後、デザイナーとして活躍するために必要な経験を積んでもらうことは、本人にとってはもちろん、シンガポールのファッション業界の発展にとっても、とても大切なことだと考えています。
ラウルは海外展開に積極的に取り組んでいます。その将来の展望とは?
シンガポールをベースにした最初のインターナショナルブランドとして世界で展開することです。すでにミラノとニューヨークにはショールームを設けました。5年以内を目標に、アジア、ヨーロッパ、アメリカの3つの大陸で、メンズとレディースの既製服、そしてアクセサリーのブランドとして、その知名度をいっそう高めていきます。