マンダリン オリエンタルからの招待状
世界の主要都市やリゾートに44のホテルを展開するマンダリン オリエンタル ホテル グループ。そんななかから、西洋の色濃い伝統と東洋の美意識が融合する、ヨーロッパのマンダリン オリエンタルへご案内します。
Mandarin Oriental, Paris
パリのエスプリ香る永遠の女性へのオマージュ
シビル・ド・マルジェリー氏がデザインを担ったホテル正面のロビー。空間のレイアウトに徹底的にこだわり、中庭の緑との一体感を生み出した。
マンダリン オリエンタルのホテル作りの根底には、ひとつの哲学が確固として存在する。「センス オブ プレイス」――。土地の歴史や伝統、文化を取り入れながら、マンダリンオリエンタルのならではのエッセンスを加え、オリジナリティを表現することである。その意味で言えば、土地の性格が強いほど、両者のコントラストは美しく際立ち、同時に異なるものが心地良く融合する妙味を存分に堪能することができる。まさにマンダリン オリエンタルの真骨頂である。
歴史的にヨーロッパでは、色とりどりの文化が日々の暮らしに根付き、時代ごとに異なる様々な表情で訪れる人々の目を楽しませてくれる。なかでもフランス、特にパリでは自国の文化を重んじることはご存じの通り。このような街に昨年6月、数多ある名門ホテルの仲間入りを果たしたのがマンダリン オリエンタル パリである。
ロケーションは世界の一流ファッションブランドが集うサントノレ通り。オペラ座やチュイルリー公園、ルーブル美術館などにほど近い、パリにおいて一、二を争う好立地である。 ホテルはそのデザインに並々ならぬこだわりをみせる。世界的な著名なデザイナー陣がそれぞれの分野で持てる才能を発揮し、サントノレ通りの新たなアイコンを築き上げた。
建物のリノベーションを担当したのは建築家のジャン・ミシェル・ヴィルモット氏。ルーブル美術館の「A 20-Year Adventure」などを手がけてきた建築界の鬼才は、周囲の環境にホテル外観を美しくとけ込ませたいと、1930年代のアール・デコ様式の建物に手を加えた。ゲストを迎える玄関正面ファサードに存在感をもたせ、歴史的な建造物の意匠をそのままにモダンなエッセンスを盛り込んだのだ。また、石造りのポーチは中庭に繋がるように設計。エントランスを抜けた正面に多彩な植物で潤う中庭が広がるようにデザインすることで、都心にあるオアシス的なアイデンティティを特徴づけた。
39室のスイートのうち7室はメゾネットタイプとなり、パリのプライベートアパートメントの感覚を味わえる。なかでもロイヤルマンダリンスイートは350㎡の広さを誇る特別な空間。白を基調としたリビングルームには柔らかな陽光が降り注ぎ、極上の滞在を約束してくれる。
39室のスイートを含む全138室のゲストルームは、パリ市内のホテルのなかでも最大級の広さを誇る。ゆとりという贅沢を手に入れた空間は、落ち着いた色合いでエレガントなデザインにまとめられる。インテリアのデザインを担当したシビル・ド・マルジェリー氏は「アール・ド・ヴィーヴル(芸術のある生活)」をコンセプトに、自ら厳選したアートワークを配置。計算の上に配されたアートワーク一つひとつが意味を持ち、リビングやベッドルームなど空間ごとの雰囲気に変化をもたせた。例えば、1930年代に活躍した写真家、マン・レイの作品が置かれたベッドルームは、その作品が表現するように、ロマンティックなパリの空気を演出するといった具合である。
もちろんディナーもこだわりの空間で堪能できる。パトリック・ジュアン氏とサンジ・マンク氏が手がけたガストロノミック・レストラン「シュール・ミジュール・パー・ティエリー・マルクス」は繭をイメージした真っ白な空間が印象的。壁や天井にはヘイヴィ・ウインジ・ストロムによる白布のファブリックアートが未来的でエレガントな空間を演出する。素材の食感や温度だけではなく、色や形にも細心の注意を払うカリナリーディレクターのティエリー・マルクス氏の美しい食の世界は、白の空間で繰り広げられることで完結するのである。
マンダリン オリエンタル パリが表現するのはパリならではのフェミニンでロマンティックなムード。マドレーヌ・ヴィオネやガブリエル・シャネルといった伝説的な女性ファッションデザイナーが活躍した1930年代のパリにインスピレーションを受け、細やかにディテールにこだわる時代の美学を見事なまでに映し出した。永遠の女性へのオマージュとして確立されたそのスタイルに触れると、デザインによって生み出される空気がいかに大切なのかを実感できる。
左/白、ベージュ、黒、緑の色合いが印象的なロイヤルオリエンタルスイート。黒壇と大理石といった東洋と西洋の哲学と文化が融合したインテリアが特徴。
中/7つのスパスイートを備えたスパは、モダンコンテンポラリーなインテリアでまとめられる。中医学医師とアロマセラピストが陰陽五行説にもとづいて開発したアロマオイルを用いたオリジナルのトリートメントを体感できる。
右/落ち着いた色使いのインテリアが大人の空間を演出する「バー・エイト」。ダークな木製の壁にはラリックのクリスタルをはめ込むなど、ここでもインテリアにこだわる。スペイン産ブラウンマーブルのバーカウンターも圧倒的な存在感でムーディーな夜を彩る。
Mandarin Oriental, Paris
251 rue Saint-Honore, 75001 Paris
TEL +33 0 1 70 98 78 88
Mandarin Oriental, Hyde Park, London
女王陛下に愛された名門ホテルとしての誇り
ゲストルームの雰囲気はマンダリン オリエンタル パリとは対照的。プレジデンシャルスイートはクラシカルな雰囲気に包まれ、調度品の一つひとつに英国の伝統を感じる。
パリからロンドンへは国際高速列車、ユーロスターが快適だ。パリ北駅を出発する列車は最高速度300キロで一路ロンドンを目指す。車窓の外に広がる田園風景を眺め、2時間15分ほど列車に揺られると、終点のセント・パンクラス駅に到着する。その荘厳なビクトリアン・ゴシック様式の駅舎に迎えられると、ロンドンに到着したことを実感できる。
ロンドンではセント・パンクラス駅のような古い建造物が街の緑とコントラストをなし、至るところでロンドン特有の美しい景観をつくっている。そんなロンドンらしさを象徴するように佇むのがマンダリン オリエンタル ハイドパーク ロンドンである。
建物は1889年に紳士クラブとして建てられた由緒正しきもの。正面にはロンドンに8つある王立公園のなかでもっとも広く、市民の憩いの場として親しまれるハイドパークがどこまでも続く。公園を彩る木々の緑と赤煉瓦が印象的なビクトリア様式の建造物が生み出す景色は、まるで一枚の絵画を観るようでもある。
ホテル内は英国王室御用達に相応しい佇まい。王室ほか日本の皇室など限られた宿泊者にしか開かれることがない王室専用のエントランスなど、特別な場所もホテル内には存在する。
マンダリン オリエンタル ハイドパーク ロンドンはその前身であるハイドパークホテルの時代から、上流階級の人々や各国の貴賓に「ロンドンの別邸」として親しまれてきた。そして、ロンドンにある名門ホテルのなかでも特別な存在感を放つのは、英国王室御用達としての誇りの表れなのかもしれない。
ホテルはしばしば英国王室のメンバーに利用され、フィリップ王子は頻繁にポロやカクテルパーティを楽しまれたという。女王エリザベス2世や後の王女マーガレットが初めてダンスを学んだ場所もここである。また、サッチャー首相の80歳の誕生日パーティーもボールルームで催され、女王エリザベス2世やフィリップ王子が臨席されるなど、王室とともにホテルの歴史は育まれてきた。
今年2012年はエリザベス女王即位60周年の年。6月には祝賀行事「ダイヤモンドジュビリー」が開催され、ロンドン中がお祝いモードに包まれる。ホテルでもこの祭りの期間中、英国王室ゆかりのホテルならではの特別宿泊プログラムを実施。巡洋艦の船上からテムズ川の水上パレードを見学したり、近衛騎馬隊にエスコートされながらセントポール大聖堂へ向かうエリザベス女王のパレードを見学したりと、特別な年に特別な場所で特別な体験ができる。そんな喜びをロンドン市民とともに分かち合うのもいい。
左/)英国料理界の鬼才といわれるミシュラン三ッ星シェフ、ヘストン・ブルメンタールによるロンドン一号店「ディナー・バイ・ヘストン・ブルメンタール」。コンテンポラリーな英国調ブラッスリースタイルを取り入れた空間で、研究を重ねて創造された歴史的な英国料理の数々を堪能できる。
中/ホテル前を行進する近衛兵。王室ゆかりのホテルならではの光景である。
右/「バー・ブリュー」はダニエル・ブリューのロンドン初進出のレストラン。旬の素材を用いたフランスの田舎料理を基本に、ニューヨークで絶大な人気を誇るスターシェフによる、素朴で奥深いメニューが繰り広げられる。
Mandarin Oriental Hyde Park, London
66 Knightsbridge, London SW1X 7LA, United Kingdom
TEL +44 0 20 7235 2000