麻布十番の、とあるイタリアンレストラン。大通りに面したビルにあるが、看板は出ていない15席くらいの会員制のお店だ。
今日はここで、ボクが少し前に出版した本の記念パーティーが開催される。
出版記念パーティーにて
発起人の方に、「どんな方々を呼びましょうか? どれくらいの人数がいいですか?」と尋ねられ迷わず、「普段から親しくしている人を中心に20人くらいの小規模な会がいいです」と答えた。
こうした会では、もちろん著者であるボクが主役となるべきなのだろうが、できるだけ参加している方々の間に新しい交流ができるようになれば、と思っている。会のプログラムもそのような内容にしてもらった。
19時からの会は、発起人の挨拶から始まり、全員の前で参加者の方々を1人ずつボクが紹介し、その後出版記念のコメントをもらった。多くの温かい言葉をいただき、感慨深いひと時だった。
2時間半の楽しい時間はあっという間だった。気の置けない仲間と、とっておきワインと美味しい食事、これで幸せを味わえないはずはない。
今回の書籍は今後10年間の日本の住宅・不動産市場(産業)がどうなっていくのかを予想したものだ。都心にある巨大書店においても数週間にわたりベストセラーにランクインしており、世間の関心の深さがうかがえる。
今後の不動産市況は好調を迎える
これからの不動産市況はどうなっていくのか? 本に書いた内容のあらましを述べると、以下のようになる。
日本の不動産市況は、2012年.13年の間は好調の状態が続くと思う。特に東京都心では、リーマンショック以降の下落から底を打ち、完全に上昇基調になると予想する。すでにマンションディベロッパーは首都圏での好立地の土地の仕入れが難しく(値段があがる。または、入札企業が増える)なっているのが実態だ。新規供給マンションの契約率も良好のようだ。
世界的大手投資銀行が、〝日本の不動産への投資を再開する.と具体的な投資予定総額までも公開したように、再び日本(東京中心)不動産へのファンドが流入しはじめている。
都心の一等地にある中古マンション・中古戸建住宅の売買価格は上昇している。地方都市は厳しいだろうが、首都圏の住宅価格は上昇するだろう。現在、政府や行政はメディアを巻き込んで、中古住宅市場を盛り上げようと必死になっている。メディアもよく調べないで、”中古住宅市場が熱い!”などと書いているが、それは局所的なことだ。
中古住宅市場は、FCチェーンや信託銀行系企業以外に大手企業が見当たらず、鼻息の荒いベンチャー企業経営者も奮闘しているようだ。こちらは、なかなか上手く進んでいないし、見通しは不透明だろう。
一方で、こうした日本の不動産が好調期を長くは保てないと予想する人も多い。今年限りだろうとか、もって来年の声が大半だ。オフィス賃料の上昇が見込めていないことや欧州金融情勢が不安定なことなどから、楽観的な見方をしていない。また中国の不動産市場は完全に下落基調に入ったので、その一時的な避難と見ている人もいる。
とは言え、2012年の日本の不動産が好調なことはまちがいない。
パーティーのあと…
1時間程度の主催関係者との二次会を済ませ、1人タクシーに乗り込み西新宿にある高層ホテルに向かった。今日の会に来て欲しかったバイオリニストに会うためだ。
最近、新しいアルバムを発表した彼女とは、昨年大学院時代の知人の紹介で出会った。初めて会ったときから、ボクは惹かれた。さっぱりした性格、気立ての良さ、涼しげな表情、どれもボクの好みだ。それから何回か2人で食事をした。
出版パーティーの開催が決まってすぐに、彼女に電話した。「今度ボクの出版記念パーティーがあるんだけど、1曲演奏してくれない?」「ざんね.ん。その日は、演奏会が入っているの…」「何時までの演奏会なの?
だったら、終わってから会えないかな」と積極的に誘ってみる。
彼女からは、あっさりと「こちらも打ち上げがあるから上手く時間が合えばOKよ」との返事。
待ち合わせの約束をした最上階のラウンジに着くと、すでに彼女はモヒートを飲んでいた。「遅いね。もうこれ2杯目よ」
「ゴメン。これでも大急ぎで来たんだよ。今夜の演奏会はどうだった?」「う.ん、それなりに。そっちは?」
と、涼しげなちいさな笑顔を作った。
いつもは照れてしまうボクも、今夜はお酒が入っている上にパーティーで気分をよくしていることもあり、積極的だった。先ほど彼女が見せた笑顔を見て、ボクの決心は固まった。彼女と迎える朝は、爽やかな気分になれそうな気がした。「今夜は、ずっと2人でいたいんだけど・・」と真剣な表情で誘った。
バイオリニストは、目線をこちらに向けた。大きな瞳がとてもきれいだった。