12月初旬のニューヨークは寒い
「今夜18時に5thAVと57thSTの角で待ち合せましょ」。
それが始まりだった。
成田空港11時発。アジアの主要都市への移動とは違い、13時間のフライトは長い。いつもは、機内食には全く手をつけずにすぐに眠りに落ちるのだが、さすがに朝11時過ぎでは、眠れなかった。
アメリカ東海岸時刻10時。ニューヨークJFK空港には定刻よりも早く着いた。到着口を出て、マンハッタンまで地下鉄で行こうか、それとも車窓を眺めながら過ごせるNYCエアポーターで行こうか悩んでいた。そんな時、「あっ、先ほどはありがとうございました」と声がしたので、ふりかえった。そこには、先ほどまで機内で対応してくれた女性がいた。
「機内で話した感じでは、先生は関西出身の方ですか? 私も関西の生まれなんです」。
「そうですよ。どうりで、気さくな方で、話しかけやすいなと思ってた」。 機内でいろいろ話していたこともあり、意気投合して立ち話が続いたので、夕食を誘ってみた。
「今夜とびっきり美味しいステーキを食べようよ。クオリティーイタリアンというお店で。最高の熟成肉を最高の腕を持った職人が焼いてくれるんだ」。
すると、彼女は冒頭のように言葉を返した。
11月半ばになると、NYの街にはスノーフレークが飾られる。場所は5thAVと57thSTの交差点の真上。そこは、ティファニー、ブルガリ、バンクリフというハイジュエラー3店と、ルイヴィトンが店を構えている交差点だ。大胆にも交差点の真上(地上5mくらいだろうか?)にクリスタルガラスでできた雪の結晶をモチーフにしたオブジェが飾られる。
「寒いですね。カップルはみんな腕を組んでいるから、私たちもそうしましょ」。
日本の不動産にそろそろ天井感のキザシ
2015年、地価は上がるのか?与党が絶対的な議席を獲得したことで現在の経済政策が続くことが決まった日曜日。金融関係者は、これでしばらくは上昇基調だと思ったに違いない。
不動産市況はどうだろう。現在は実需用の不動産、投資用不動産ともに好調だ。大型ビルの取引も増えている。そして、賃貸マンションの新築着工数も増え続けている。ここ2年くらいの間に新築マンション価格は上昇、首都圏中心地の中古マンション坪単価も上昇、投資用マンションもかなり価格上昇した。業界関係者は、「もうそろそろピークだろう」という声と「まだまだ、上昇基調が続く」という声が交錯している。
2015年の地価は各地で上がることは間違いないだろう。大都市圏だけでなく、地方都市の中心部でも、上昇すると思われる。しかし、マンションは買い時か?の判断は難しい。そろそろ、天井感の予感が漂っている。
プラザホテルでの再会
リザーブしておいた店に入った。1階はウエイティングルームで階段を上がると、そこが世界一と言われるステーキが食べられるフロアだ。
「たまには、こうして乗客の方と夕食をするの?」
「大学を出てこの会社に入社して5年経つけど、初めてよ。今日は同乗のクルーに親しい人がいなくて、こちらでの2日間のステイをどう過ごそうかな、と思っていたところだったの」。
「いつもこうしてCAを誘っているの? 美味しいお店があるよ、とか言って」と目線を合わせた。
「もちろん、初めてだよ。なんだか、今日お誘いしなかったら、二度と会えないかもしれないと思って」と、恥ずかしいので目線をそらせた。
レコメンドされた、とろけるチーズがのせられたサラダをシェア、そして2か月以上エイジングされたサーロインステーキはそれぞれ、お腹いっぱい口にした。
気づけば、カリフォルニアNAPAの葡萄を使った赤ワインのボトルを2本、空けていた。
「どこのホテルに泊まってるの?」
「ここからすぐの59thSTにあるプラザホテルだよ」。
「名門ホテルですね。ちょっと部屋を見てみようかな」と少し酔った声で言った。
ルームサービスで頼んだ赤ワインを、飲み始めた。
赤ワインのせいなのか、ホテルの部屋から見えるNYの夜景に魅せられてか、はたまた目の前で無邪気に話す大きな瞳のせいなのか、どれもがミックスした気持ちの中で、ソファに座る彼女の肩に手をかけた。彼女がこちらを見て、つぶやいた。
「ねえ先生、泊まっていかない?とか言わないでね」と窓の外に広がる景色を眺めている。
「どうして? いまそう言おうと思ったのに・・・」と、慌てて、そしておどけた。
「私のこと、覚えてないの?」とワイングラスを片手に窓際に座って、笑った。 「覚えてないようね。私が中学生の時・・・。先生と・・・。ねっ、思い出した?」 僕は、どうしても思い出せなかった。
「先生と週に2回くらい会ってたよ。塾の先生と生徒としてね。生徒を口説くなんて、どうなのかしらね」。
摩天楼の吸い込まれるような景色がまぶしい。