奥山清行×ランバン コレクション タイムレスなスーツを創造する
フレンチエレガンスの洒脱さと洗練されたインテリジェンスをかねそなえるランバン コレクションのメンズスーツ。
私たちの日常の暮らしにシンプルな美とカッコイイ遊び心を創造し、世界を魅了し続ける工業デザイナーの奥山清行氏が、自らオーダーメードした一着を語る。
胸板を立体的に見せる熟練の技が映える。ランバン コレクション独自のパターンオーダーは、思い通りのディテールと最良の着心地を実現する。
カメラレンズに向かうと、それまで和やかに談笑していた奥山清行氏の表情は、一瞬にして強い意志を湛えた。
「我々の仕事は経営陣の前でのプレゼンも多く、全てをかける数分を前にして、つねに緊張感が要求されます。それには、ボタンを留めた瞬間に、自らを奮い立たせてくれるような”鎧”みたいなものですね」
奥山氏にとって良いスーツの条件は、まず勝負服としての価値にあるという。
「だからこそ、若い人にも早くから仕立ての良さを知ってほしいと思うんです。自分自身にピッタリ合っているというのは絶対条件ですから。どんなに高価な既製スーツもかなわない。このスーツも、採寸の際に肩幅や二の腕なんかにもう少し余裕があってもいいかな、と思ったのですが、実際着てみたら、完璧に心地よくフィットしている。この絶妙な勘と職人技には感心しました」 着る人の細やかな要望にも幅広く応えるランバン コレクション独自のセレクションによる一流の素材で、一流のモノ作りの技を体感できることの素晴らしさを奥山氏はこう称賛する。
氏にスーツのデザイン性を問うならば、”遊び心”というキーワードが気になるところだが、透かさずこう返ってきた。
「遊び心と言ってもトレンドにこだわりすぎて、すぐ飽きてしまうようなものはダメですね。僕自身のデザインコンセプトである”モダン・シンプル・タイムレス”にも通じるのですが、むしろ、10年後、20年後、いや30年後でも、ちょっと手直しするだけで長く使えるようなシンプルなものがいい。このスーツも一見地味だけど、素材の持つ質感が見事に引きだされていて、着れば着るほどその良さを感じる。この色をここまで洗練された一着にしてしまうブランドのエレガンスを実感しています。タイムレスな価値というのは、実用的な物の中にこそあって、スーツやコートにしても、何十年着ても、なお愛着が増してくるものであってほしいですね」 『KEN OKUYAMA』というブランドで自らの世界観を発信し続ける奥山氏。本物の一流を知る眼と直観が捉える実用の美への哲学は限りなく深い。
「デザインというのは、決して難しいことではなく、生活の質を良くしたい、自らを向上させたいという気持ちの表れにすぎないんです。本来、それぞれが置かれた境遇において、日々、さまざまな工夫をしながらより良いものを創りだしていくというプロセス自体がデザインなんですね。イタリアにいて、さすがだな、と思うのは、デザイナーや建築家が生みだしたものを、そこに暮らしている人々が、自分なりにいろいろな要素を取り入れて、日常の生活の中に見事に調和させていく。こういうことがデザインの本質や豊かさだと思うんです。だから、スーツでも、その一着とともに、日々、進化する自分の姿を創造していけるようなものに出会えたら最高ですね」
時空間を超えてクオリティライフへのあくなき探究を続ける奥山氏とランバン コレクション。内なる情熱と果てしない創造力をかきたてるグレーの煌めきが鍛え抜かれた体躯を包みこみ、いぶし銀のような化学反応を起こしていた。
奥山清行 KEN KIYOYUKI OKUYAMA
工業デザイナー/ KEN OKUYAMA DESIGN 代表。1959 年山形市生まれ。ゼネラルモーターズ社チーフデザイナー、ポルシェシニアデザイナー、ピニンファリーナ社デザインディレクター、米国アートセンターカレッジオブデザイン工業デザイン学部長を歴任。
2007 年よりKEN OKUYAMA DESIGN 代表として、山形・東京・ロサンゼルスを拠点に企業コンサルティング業務のほか、自身のブランドによる自動車・インテリアプロダクト・眼鏡の製造販売を行う。
アートセンターカレッジオブデザイン客員教授、多摩美術大学客員教授、金沢美術工芸大学客員教授、山形大学工学部客員教授。