Hawaiian Arts & Culture
ハレクラニでは夕方、樹齢130年を越えるキアヴェの樹の下で元ミスハワイによる優美なフラのショーが行われる。
ハワイの人たちは、自然と共生して生活をしてきた。それはこの土地に暮らすことで代々受け継がれるDNAのようなもので、歴史や文化、特にフラにそのような精神が感じられる。フラの動作には、風、雨、海、花、大地など、それぞれに意味があり、自然を感じ自然と共に生きる姿が表現されている。自然の中に神々の存在を見出し、神々と自然を崇拝しながら暮らすハワイの人々のおおらかさや、ゆったりした暮らし方は「アロハ・スピリッツ」と呼ばれている。今回は、アロハ・スピリッツ溢れる「ハワイの文化に根ざした芸術性」をテーマにお届けします。
写真:大橋マサヒロ
取材協力:宝田誠
Explore Hawaiian Traditional Culture:Kamehameha Day
イオラニ宮殿の向かいに建つカメハメハ像にレイが掲げられ、3年ぶりにパレードが行われた。
ハワイの伝統文化を旅する
6月11日、ハワイを統一したカメハメハ大王の偉業を称えるイベント「キング・カメハメハ・セレブレーション・フローラル・パレード」が行われた。ダウンタウンのイオラニ宮殿からワイキキのカピオラニ公園までのルートを、レイで彩られた山車や馬、マーチングバンドなどによるパレードが行なわれ、見物客を喜ばせていた。前日には、カメハメハ大王像に40フィート以上もあるレイを捧げる「レイ・ドレーピングセレモニー」も行われた。レイは単なる飾りではなく、神への供物という意味もあるのだという。ハワイの人たちは自然を愛する気持ちの表現として、また、大地から聖なる恵みを分けてもらうためにレイを作り、地位の高い人へと捧げる。パレードの際には、行進するすべての人が、畏敬の念を込めてカメハメハ大王像の前で立ち止まる姿が印象的だった。カメハメハ大王の両腕に捧げられたレイには、ハワイの人々の団結や平和への願い、そして芸術性が込められているのだ。
ハワイ先住民には、何世代にも渡って継承していけるよう、土地の自然を守り育てる考え方が深く根付いている。例えば、ハワイの漁師は伝統的な漁法に見られるように、自然との共生の精神を代々伝えてきた。彼らは自然の時の流れに合せて将来にストックを残し、感謝の気持ちを忘れず、必要な物を必要な分だけ使う。
ライフスタイルとアロハ・スピリッツが一体となっているハワイの伝統文化やアートは、滞在するホテルやこだわりのレストラン、バーで身近に感じることができる。それでは、神話や伝説を語り継ぐ「Hawaiian Arts & Culture」を旅してみよう。
アートを通じてハワイの自然や文化に触れる
ハレクラニの歴史は、今もラウンジにその名を残す元オーナーのロバート・ルワーズが、1907年に現在の本館がある敷地にビーチハウスを建て、ゲストを迎えたことに始まる。ハレクラニの敷地前の通りはルワーズ・ストリートと名付けられており、ルワーズ氏がワイキキの発展に多大な貢献をした人物だということがうかがえる。
マノア山の清涼な空気がルワーズ・ストリートを吹き抜け、ホテルへと澄んだ冷気を運ぶ。日中も館内がひんやりと涼しいのはそのためだという。ホテル前のビーチはカヴェヘヴェヘと呼ばれ、谷に降った雨が地下水となり海底から湧く、古くから癒しの海辺として知られてきた。その湧水は、心身を清め癒す力を宿すとされ、現地の人はこの地に建つハレクラニを、「天国にふさわしい館」と呼ぶ。ハレクラニは、聖なる土地に建つ天国の館なのだ。
夕暮れが近づくと、樹齢130年を超えるキアヴェの木の下でフラと生演奏のショーが始まる。この古木は数年前に前触れもなくその寿命を終え倒れたのだが、今では残った株が根を下ろし、再生したのだ。その際に朽ちた幹は、生花を活けるために活用されている。寿命を終えた古木の幹が新たな息吹を吹き込まれアートになり、レセプションやレストランでゲストを見守っているのだ。
館内を彩るファインアート・コレクション
ハレクラニの館内には、ハワイのローカルアーティストやコンテンポラリーアーティストによる「選りすぐりのアート作品」が点在している。なかでも、ジョン・コガ氏による絵画『ハレクラニ』は、本館のラウンジの為に描かれたもので、ハワイの海や山を柔らかなパステル調の色彩で表現しており、その名の通り過去と現在、そして未来へと繋がるハレクラニを象徴する作品だ。現在はハワイ島に住み創作活動に励むコガ氏は、「アーティスト同士だけでなく、コミュニティ全体の人助けをするのが私の役目だ」と語る。さらに「地域社会やアイナ(土地)に対してお互い思いやりを持つことが、生きることの最も大切な要素だ」とも語っている。アロハ・スピリッツによる、温かいもてなしと一流のサービスでゲストを迎えるハレクラニも、地域や環境に対する思いやりで、コガ氏と同じ理念を表現しているのだ。
また、イオラニ宮殿やシャングリ・ラ邸などでは、ハレクラニの滞在ゲストは入場が無料となる。ハレクラニとそれら施設との文化的交流の深さが窺える
アロハ・スピリッツを継承するハレクラニ
コロナ禍で開業以来初めてとなる全館営業停止の期間中に、ハレクラニでは大規模リニューアルが行われた。建物の外観はそのままに、建物の主要設備の更新やパブリックスペースの刷新、全客室のリニューアルが行われた。しかし、歴史あるハレクラニのデザイン哲学を後世につなぐべく、客室のバスルームに使用されているセラミックのタイルは、1984年の開業当時に特注したものを大切に使用している。歴史を大切に紡ぎながら、使いやすく心地よく静かに進化させる。ハレクラニの目指すサステイナブルな考え方が随所に生かされている。窓からの太陽光を柔らかく、リビングスペースに届ける木製のルーバー、ハワイの自然を感じるハレクラニ伝統の、上品な「7色の白」でコーディネートした室内の雰囲気はそのまま継承された。また、オープンエアで開放的な雰囲気のレストラン「House Without A Key」は、ワイキキビーチとダイヤモンドヘッドを一望できるようになり、プールサイドにはこれまではなかったバーカウンターが新設された。
すべてのゲストが特別なひと時を過ごせるように、ハレクラニは「天国にふさわしい館」を継承し後世へと伝えていく。神聖な海と心地よい風、そしてハレクラニだけの静寂さに包まれて過ごすことが、何にも代え難い最高の贅沢だと気づかせてくれる。
①
①「ダイヤモンドヘッドスイート」からはワイキキビーチとダイヤモンドヘッドが一望できる。②ラナイに出て感じるのは、燦々と降りそそぐ太陽と清涼な風の心地よさ。③開業当時から変わらないバスルームのセラミックのタイルに安らぎを感じる。④メインプールの先には聖なる海、カヴェヘヴェヘが広がる。
Information
HALEKULANI
2199 Kalia Road
Honolulu, HI 96815
TEL:+1(808) 923-2311
www.halekulani.jp
大地の恵みを味わう至福
「世界の美食家が気軽に集う店」をコンセプトにしたレストランが6月にオープンした。オーナーのロバート・堀氏は自他共に認める美食家で、食材へのこだわりに妥協はない。特にトリュフへの愛は尋常ではなく、常に最高のトリュフを提供できるよう、季節ごとに旬の産地から取り寄せる。トリュフに限らずすべての食材にこだわりがあり、そのため業者や農家と深いつきあいができるのを楽しんでもいる。例えばハワイには生食用の卵農家が1軒しかなく新規取引きは不可能だった所、何時間も話し込んでお互いの夢を語り、鶏の初めて産む卵全てを「マルゴット」に貰えるようになったそうだ。
香草やミント、完熟のマンゴーなど地元食材も積極的に取り入れており、モロカイ島の甘エビとキャビアの一品は、すでにこの店のシグネチャーのひとつといえる。希少なワインと厳選されたキャビアやトリュフなど、世界中の高級食材、ハワイの大自然で育った素材のマリアージュを楽しめる。また、料理だけでなく店内を彩るローカルアーティストの作品に、ハワイの自然や文化を感じることができる。生産者、アーティスト、そして美食家がこの店に集い、「食」を通じて皆が幸せを分け合うのだ。
Information
Margotto Hawaii
514 Piikoi Street,
Honolulu HI 96814
TEL:+1(808) 592-8500
www.margotto-hawaii.com
クラシカルな建物に灯る情熱
美食家たちの熱い支持を集めるダウンタウンの有名レストラン「セニア」を手掛けるイギリス出身のシェフ、アンソニー・ラッシュ氏が、日中はヨーロピアンテイストのブランチ、夜はカクテルを楽しめる、ローカルにもツーリストにも愛されるバーラウンジを昨年オープンした。エレガントなカクテルとフードは、ハワイローカルの食材と彼のクリエイティブが融合したアート作品ともいえる。
1902年に英国人船員によって建てられた歴史的建造物Joseph W.Podmore Buildingが店名の由来だ。英国出身のラッシュ氏はこの建物にインスピレーションを感じたのだろう。彼は世界のレストランやバー巡りを通じ、旅先で出会う料理やドリンクにインスパイアされ誕生したメニューも提供している。天然石に盛られたフィンガーフードはハワイの海を、鮮やかに輝くカクテルの氷は大地の鼓動を想わせる。様々な地域の料理やカクテルを五感で楽しめる芸術へと昇華する、彼のイマジネーションの世界に酔いしれたい。
店内は曲線的なフォルムのラグジュアリーなソファー席と、ひとりでも気軽に利用できるポップなテイストのバーカウンターがあり、様々なシーンで楽しめるのもうれしい。
Information
Bar Podmore
202 Merchant Street,
Honolulu,HI 96813
TEL:+1(808) 521-7367
www.barpodmore.com