英国を発祥とし、数年前に日本のアウトドアシーンに新たに吹き込まれたグランピング。今ではすっかり定番のキャンピングスタイルとして定着し、国内でも楽しめる場所が増えている。多方、主に海外のラグジュアリーホテルでは、客室とは別にあえてグランピング体験を提供するところも。多様化しながら進化するグランピング。その最前線をご紹介する。
01 Rajasthan, INDIA
辺境の地のテントリゾートで真のグランピング体験を
AMAN-I-KHAS アマニカス
アマニカスがオープンするのは1年のうち、10月から5月末までの乾季の期間だけ。北インドの乾季は青空と涼風に包まれ快適だ。モンスーンが始まる初夏が近づくと、テントは土台を残して完全に撤収される。
©Aman
アマン第一号となるアマンプリが開業してから2018年で30年。これまでアマンはリゾートを通して地域とつながり、伝統文化の継承に敬意を払い、さらには自然環境保全にも取り組んできた。インド北西部、ランタンボール国立公園のはずれにあるアマニカスもそんなアマンのフィロソフィーを体現したリゾートの一つ。ただ、他のアマンと異なるのは、宿泊や食事、スパがすべてテントの中で行われるということ。つまり、アマニカスでの滞在そのものがグランピングなのである。
テントは全部で10張。客室用のテントのほか、ダイニング&ラウンジ、スパのためのテントが、丘と湖に囲まれた広大な敷地に並ぶ。印象的な真っ白なテントは、かつてこの地を征服したムガール人の住居をモチーフにデザインされているという。
テントといえども冷房は完備され、インテリアは豪華さを極める。100㎡を超える室内空間は白いコットンのカーテンで優雅に仕切られ、6mの高さに及ぶ天蓋から差し込む優しい光は何とも心地よい。クラシカルな家具が随所に配され、その雰囲気はラグジュアリーホテルの客室といわれても疑いを抱く余地はまったくない。
布一枚で仕切られたテントの外には、多様な野生動物が棲息する原野が広がり、鳥の歌声や木々の葉が風に揺れる音が耳に優しく届く。アマンのサービスと共に大自然をより身近に感じる贅沢。これこそ究極のグランピングと言えるのではないだろうか。
滞在中の最大の楽しみは、ランタンボール国立公園で野生動物に触れ合うサファリ。同公園内では2015年にベンガルトラの子が発見された。現在では60頭近くのトラが棲息しているといわれている。
©Aman
Information
AMAN-I-KHAS
Village-Sherpur-Khiljipur, Ranthambhore Road, Sawai Madhopur Rajasthan, India
アマン共通日本語対応フリーダイヤル
TEL 0120-951-125(10時~19時)
http://www.aman.com
02 Chiang Rai, THAILAND
冒険心をくすぐる秘境でゴージャスなキャンプ体験を
FOUR SEASONS TENTED CAMP GOLDEN TRIANGLE フォーシーズンズ テンテッド キャンプ ゴールデン トライアングル
デラックステントにはテラスにプライベートバスを完備。圧倒的な景観を目の前に、心の底からリラックスできる。
©Seet, Ken / Four Seasons.
ラオスとミャンマーの国境に接するタイ最北の奥地。「黄金の三角地帯」と呼ばれる鬱蒼としたジャングルのなかにリゾートは突如、その姿を現す。特徴はホテルの名にもあるように、すべての客室がテントスタイルとなること。ジャングルとの距離が近く、19世紀にここを訪れた探検家の気分を存分に味わえる。とはいえそこはフォーシーズンズ。タイ北部の文化を反映させた木製や革製の家具が配され、素朴ながらも豪華なサファリスタイルのインテリアで、ゲストをゴージャスな気分にさせてくれる。もちろん食事やスパもジャングルに覆われた野趣あふれる貴重な環境のなかで堪能できる。オールインクルーシブのパッケージが多数用意され、象とのふれあいや黄金の三角地帯のジャングルツアーなどを効率的に楽しむことも。冒険心が刺激される秘境で、まぎれもない非日常体験をしたい。
-
リゾートは15張のテント1つのロッジから構成される。ジャングルの真ん中にあるため、人工的な音は一切耳に届くことはない。
©Seet, Ken / Four Seasons.
-
地元の木材などでできた家具がインテリアのアクセントとなるスーペリアテント。開放的な空間では木々の濃厚な香りが吹き抜ける。
©Seet, Ken / Four Seasons.
03 Los Angels, U.S.A.
煌びやかな夜を堪能する大都市でのグランピング
A FOUR SEASONS HOTEL, BEVERLY WILSHIRE, BEVERLY HILLS ア フォーシーズンズ ホテル ビバリーウィルシャー ビバリーヒルズ
ロケーションは大都会の絶景を一望するホテルの最上階に。アーバン・グランピングを堪能するのにこの上ない場所だ。
©Four Seasons.
華やかなビバリーヒルズの中心に構える老舗ホテル。1928年の創業以来、歴史を刻むルネッサンススタイルの建物は、エリアの象徴となってきた。137のスイートを含む全395の客室はどれもモダンで格調高く、この上ない贅沢な滞在を叶えてくれる。そんななか、開業90周年を迎えるにあたり、同ホテルの魅力を再発見する試みとして始まったのが、最上階に位置するベランダスイートでのアーバン・グランピングだ。200㎡を超えるテラスに暖炉を囲むラウンジや広々したテントを設け、大都市での優雅かつワイルドな夜を提供している。クリスタルのシャンデリアや大理石のランプ、毛皮の絨毯など、贅を尽くした空間で、ロデオドライブなどのシティービューを眺めながら、シェフこだわりの料理に舌鼓を打つ。自然のなかとは違ったコンクリートジャングルでの特別なグランピングを堪能したい。
04 JEJU, Korea
神秘的なリゾートアイランドで手軽に体験するグランピング
THE SHILLA JEJU 済州新羅ホテル
テント内はホテルの客室のような上質な雰囲気に。有名ホテルや最高級ヴィラで使用されているメーカーによる注文家具が室内を彩る。
東シナ海に浮かぶ済州島は、コバルトブルーの海と青く澄んだ空、そして豊かな緑に包まれた韓国きってのリゾートアイランド。島の中心には世界遺産に登録される漢拏山がそびえ、神秘の島と例えられている。この島南部の中文ビーチで、グランピング初心者に嬉しいサービスを提供するのがここ。韓国を代表する高級リゾート、済州新羅ホテルだ。グランピングは韓国でも人気があり、同ホテルではどこよりも早く2010年にグランピングゾーンを開設。ラグジュアリーホテルでキャンプを楽しむという新感覚のアウトドアを牽引してきた。カバナスタイルの優雅なテントは約40㎡とゆったりサイズ。暖炉やソファーベッド、ペンダントスタイルの照明などが配され、家具はすべてが注文製作と、こだわりの空間で贅沢なアウトドア体験を満喫できる。なお、就寝はホテルの客室を利用するため、いきなりテントで朝を迎えるのはちょっと……、という初心者におすすめだ。
05 KwaZulu Natal, South Africa
野生動物との出会いを求め大自然でテントキャンプ
THANDA SAFARI タンダ サファリ
ロッジやヴィラも備えるが、よりワイルドに、ロマンチックな夜を過ごしたい方には、ラグジュアリーなテントでの滞在がおすすめ。ロケーションは南アフリカ・ズールーランドの北部。クワズールナタールにはビッグファイブと呼ばれる野生動物(バッファロー、ゾウ、ライオン、ヒョウ、サイ)が棲息し、宿泊者はゲームドライブやブッシュウォークを通じてこれら貴重な動物との出会いを楽しめる。陽が落ちてからはブッシュのなかで豊富なワインと共に贅沢な料理を味わい、焚き火を囲みながらのんびりと星空を眺める-。素顔のままのアフリカの大自然を堪能できる贅沢なリゾートである。
-
ワイルドな外とは対照的な上品なテント内。
-
敷地内では様々な野生動物たちと出会える。
Information
THANDA SAFARI
D242 off the N2, Hluhluwe,KwaZulu Natal, 3960 South Africa
[日本でのご予約・お問い合わせ]
ザ・リーディングホテルズ・オブ・ザ・ワールド TEL 0120-086-230(平日9:30 ~18:00、土日祝を除く)
http://www.LHW.com/thanda
06 Ubud, Indonesia
熱帯雨林のなかに誕生したハイセンスなキャンプリゾート
CAPELLA UBUD カペラ ウブド
今年7月にインドネシア・バリ島のウブドに開業。リゾート建築界の帝王と呼ばれる建築家のビル・ベンズレー氏が、冒険の精神に敬意を表してこの超高級テントキャンプを設計した。敷地内はキャンプと呼ばれ、すべての部屋をテント張りにするなど、椰子やバナナの木などが茂る熱帯雨林を舞台に、アウトドア体験を極上のサービスと共に提供している。野趣あふれながらも優雅なプライベート客室はテントのなかとは思えないほどに高いデザイン性を誇る。プライベートプールが備わる離れの個室はまさに熱帯雨林のなかに佇む大人の隠れ家といった趣き。溢れるばかりの手付かずの自然を独り占めしたい。
Information
CAPELLA UBUD
Jl. Raya Dalem, Banjar Triwangsa,Desa Keliki, Kecamatan Tegallalang,Ubud, Indonesia
[日本でのご予約・お問い合わせ]
ザ・リーディングホテルズ・オブ・ザ・ワールド TEL 0120-086-230(平日9:30 ~18:00、土日祝を除く)
http://www.LHW.com/capellaubud
01 富士河口湖, 山梨
大自然を極める丘陵のグランピング
星のや富士 HOSHINOYA Fuji
日本初のグランピングリゾート「星のや富士」。開業3年を経た今なお、人々を大いに沸かせている。そして、その実力は、期待をはるかに超えるものであることをPAVONE 読者にもお伝えしたい。
Text by 朝岡久美子 Photographer 佐藤 久
“グラマラスでゴージャスなキャンプ”というグランピングの語源を思わせるような艶やかな夜の森の情景。日没後の、沈黙の自然との密やかな対話もまた、アウトドアならではの醍醐味だ。
遊びのプロ集団の集大成
東京都心から車でわずか一時間半。2015年に誕生した「星のや富士」は、今や国内のみならず海外からも多くのゲストを迎えている。
日本各地の観光地の知られざる魅力を掘り起こし、その地ならではの大人の遊びを極めることをコンセプトとしてきた星野リゾート。外遊びのプロ集団によるグランピング施設は、国内におけるグランピングブームの火付け役と言っても過言ではない。
心躍らせる〝丘陵のグランピング〞
まずは、河口湖畔の丘陵地一帯に広がるダイナミックなランドスケープに圧倒される。麓からは見通すことのできない標高900mの小高い森の中で繰り広げられるアウトドア体験は、それだけで大の大人たちを高揚させるだろう。
滞在の始まりは麓のレセプションから。一面リュックサックでデコレーションされたユニークな空間が、これから始まる〝神聖〞な体験のワクワク感をいやが上にも盛り上げてくれる。ここで一息、非日常へのシャワーを浴びて準備万端。カッコいいラングラーで一路、丘陵の中腹へ。
河口湖の絶景をバックに木々の間にたたずむ瀟洒なキャビンに到着。一見、無機質な空間に思えるが、足を踏み入れると、目の前に一気に広がる壮大な情景に心を奪われる。無駄な要素を極限まで削ぎ落した空間だからこそ感じられる大自然との完璧な一体感。開放性とプライベート感が程よく溶け合う空間は、不思議なまでに温もりに満ち溢れ、すでに研ぎ澄まされつつある五感をより豊かに癒してくれる。
いよいよ〝天空の森〞に広がるアウトドアの拠点へ。看板の矢印通りに丘陵を登り切ると、もうそこは麓にたたずむ湖も見えないほどの深い森の中。堂々と聳えるアカマツの木々の間から降り注ぐ心地よい木漏れ日が、ゆったりとした時間の流れを告げるかのようだ。
アカマツの深き森に遊ぶ
森の中を元気に闊歩する若き〝木こり〞たちの登場だ。彼らこそが、ユニークなアウトドア体験をナビゲートしてくれる達人、〝グランピングマスター〞たち。しかし、ここでは一人の良き友人として、ゲスト一人ひとりの〝遊び〞を身近にサポートしてくれる強い味方なのだ。
ふと、目をやると、キャンプファイヤーの火を囲むようにおのずと人々が寄り添う。集いの場〝クラウドテラス〞は、森のコミュニティの重要な拠点だ。古来、人間に備わったアウトドアの野生が少しずつ呼び覚まされていくかのように、皆、炎に引き寄せられていく。そんな共通の理念を共有しつつ、大自然の真っただ中で、それぞれが思い思いの時間を過ごす。この上ない豊かな時の流れに、おのずと自然に共鳴してゆく自らを感じることだろ。
本物の旅の魅力に出合う
滞在中はグランピングマスターたちがナビゲートしてくれるアクティビティにも挑戦したい。薪割り、燻製づくり、湖上の早朝カヌー体験、樹海ネイチャーツアー…。アウトドアの魅力を真摯に追求し続ける達人たち、いや友人たちが、富士山麓を舞台に彼ら独自の遊びの極意を惜しみなく伝授してくれる。
ちなみに、グランピングの醍醐味は、これからの寒い季節にこそある。富士山麓の冴えわたる空気が紡ぎだす大自然の神秘とのふれあいの時をぜひ堪能してほしい。
大人も子供も、どんな世代の心にもその喜びがストレートに伝わる「星のや富士」でのグランピング滞在。生きとし生けるものたちの生命の力に癒され、どんな五つ星ホテルでも味わえない真心と情熱に満ちたもてなしに心温まる豊かなひととき。旅の上級者にこそふさわしい本物の旅の魅力がそこにある。
02 千葉, 千葉
限られたゲストに許された会員制グランピングクラブ
東京クラシックキャンプ
今年7月、日本初のメンバーシップ制グランピングクラブとして満を持してオープンした。ロケーションは東京から車でわずか1時間足らずの千葉市内。野鳥や小動物が暮らす森のなかに、木造のキャビンのほか、アウトドアの本場、スウェーデンやベルギーから取り寄せた常設グランピングテントが配置される。「大人のグランピング」が体験できる場所として誕生しただけあり、大自然のなかにゆったりとキャビンやテントが佇む様子は、まるで大人の秘密基地といった印象だ。
個性豊かな表情のキャビンは、ほとんどが地元の大工とスタッフによる手作りというこだわりよう。木々の合間にしっくり馴染むように佇み、手作りならではの温かな雰囲気でゲストを迎え入れる。そのキャビンには美しい景観を望むテラスにバスタブを設置。さらに外で料理ができるキッチンを備えるなど、小鳥のさえずりや木々のざわめきを耳に、思い思いに森の時間を楽しめるようになっている。
キャンプの楽しみである食事は、近隣の農家で仕入れたフレッシュな野菜をはじめ、地元で調達した食材によるオリジナルメニューが中心。ディナーはバーベキューメニューかダッチオーブンメニュー、薬膳鍋からチョイスでき、例えばダッチオーブンを使ったローストチキンは、丸鶏を火にかけるだけでいいように下準備がされているため、憧れのダッチオーブン料理が手軽に楽しめると人気だ。
メンバーシップ制ということもあり、クラブの方針に賛同し、クラブを一緒に育てていきたいというメンバーだけが集うという安心感も。贅沢な自然のなか、同じ価値観を共有する者同士で同じ時間を共有する。快適で心まで豊かな気持ちになるキャンプを堪能してはいかがだろうか。
03 御殿場, 静岡
ホテルライクな充実の施設で快適にアウトドアを楽しむ
藤乃煌 富士御殿場
アウトドアデッキやインルームダイニングが備わるキャビン。アウトドアの楽しみとインドアの安心を兼ね備えている。
ハンモックに揺られながら富士山の雄姿を望むことのできる贅沢なロケーション。藤乃煌 富士御殿場は今年4月に登場した絶景のグランピング施設だ。敷地内に点在する独創的な建物は、キャビンと呼ばれる宿泊の場所。足を踏み入れると、シンプルな外観からは想像できないほどに落ち着いた空間が広がる。各キャビンには中庭にウッドテラスが備わるが、なかでも「藤乃スイート」のテラスはその面積が通常の4倍。専用のアウトドアソファが設置され、開放的な青空の下で思い思いの時を過ごせる。キャンプの醍醐味である食事は、洗練されたコーススタイルで、ホテル出身のシェフによるアウトドア料理が提供される。夜は満天の星の下、焚き火のそばで時の流れに身を任せる幸せ。あふれる自然とダイナミックな景観のなか、とっておきのアウトドア体験をしたい。
-
雄大な富士山を正面に望む。
-
大型の窓が開放感を演出してくれる。
-
-
地元の静岡県の食材をふんだんに用いたディナー。
04 横須賀, 神奈川
世界的建築家がデザインの客室で爽快シーサイドグランピング
snow peak glamping 京急観音崎
客室となるモバイルハウスの窓を開ければ、目の前に広がるのは東京湾の海。静かに響き渡る波音は、深い眠りに誘う最高のBGM に。
美しい自然に囲まれた三浦半島でリゾートホテルなどを展開する京急グループと、アウトドアブランドのスノーピークが共同運営する常設グランピング施設。昨年6月にオープンし、ホテル運営会社ならではの充実したサービスを受けながら、アウトドア体験ができると人気を博している。目の前に東京湾が広がる絶好のロケーションが魅力で、心地よい潮風が吹き抜ける敷地内に3棟のモバイルハウスが建つ。木目が柔らかな印象のこの建物は「住箱 ― JYUBAKO ―」と呼ばれ、世界的な建築家として知られる隈研吾氏とスノーピークのコラボレーションで製作されたこだわりの客室。シンプルながらも壁全面の窓が開放感を演出し、爽やかな目覚めを約束してくれる。食事では海の幸に恵まれた三浦半島ならではの味わいを楽しめる。海沿いのキャンプ場ならではの醍醐味をかみしめたい。
-
-
客室内は快適で開放的な雰囲気に。