歴史息づく京都で進化を止めない宿。 ラグジュアリーホテル 京都の陣
新規開業・注目の旅館・ホテルへ
「THE HIRAMATSU京都」2020年3月オープン記念インタビュー 数寄屋建築の棟梁として
国内外から訪れる観光客を受け入れるべく、ホテルの開業ラッシュが続く京都。外資系高級ホテルが満を持して進出する一方で、現代的スタイルのこぢんまりとした旅館が密かに誕生する。多様化する京都のラグジュアリーホテルの今に迫ってみる。
中村外二工務店 代表 中村義明さん
日本を代表する数寄屋建築の工房として、伊勢神宮の茶室からロックフェラーやジョン・レノンの自宅までも手掛けてきた中村外二工務店。当代の棟梁である中村義明氏が手掛ける2020年に向けたプロジェクトが、京都の中心部で今まさに進行している。「THE HIRAMATSU京都」―。日本のレストラン業界を牽引してきたひらまつによる初の都市型ラグジュアリーホテルである。
京都の心臓部、中京区の室町通りに開業が予定される「THE HIRAMATSU京都」。大工の神様と呼ばれた先代・中村外二を父とし、その技術と哲学を受け継ぎ、京都という町を熟知する二代目中村義明氏は、今回、古くから残る京町家の建物を継承しながらも新たに誕生するホテルに、どのような想いで向き合っているのだろうか。
お客様が喜ぶものを
ひらまつさんとの出会いは、京都高台寺にあった100年の歴史を持つ数寄屋建築の料亭の再生をした時でした。フランス料理を手掛けてきたひらまつさんですが、料理を極める人の想いはどこか大工と似たところがあり、その想いを高台寺で形にできたことが、今回のホテルプロジェクトに携わる大きなきっかけにもなりました。
この時に手掛けた「高台寺十牛庵」は明治時代から大正時代にかけて活躍した著名な数奇屋大工、北村捨次郎や上坂浅次郎が普請した建物を修復することでした。しかし、今回のプロジェクトでは、古くから残る京町家を改装しつつも新たな建物や庭園を加え、ホテル空間全体を生み出すことです。
かつて我々は松下幸之助翁の茶室を幾つも手掛けてきましたが、一緒に仕事をさせてもらって知ったのは、「客が喜ばなければ儲けてはいけない」という考えが翁の根本にあるということです。つまり、ひらまつさんは我々の施主という立場にありますが、その向こう側には東京や地方の都市、さらには海外から京都という街に憧れや期待を抱いて訪れる多くの宿泊者というお客様がいる。そうした彼らが喜ぶものをつくらないといけない。このプロジェクトを進めるにあたって、そこを間違えてはいけないとまずは肝に銘じています。
渡り六分に景四分
日本建築というのは庭屋一如といって、庭と建物の調和を取ることが大切です。昔は建築費が1億円あったとしたら、その内の9000万円が庭にかけられるほど、庭が重要視されました。現在では以前のように十分に広い土地がなく、集約的なやり方にならざるを得ません。だからこそ、何らかの形で自然を部屋の中に取り入れることを大事にしないといけないと考えました。敷地内における自然の象徴となる庭は、一つは玄関の正面に配置しています。ここは宮島松と呼ばれる盆栽で有名な松だけを使った静かな庭です。庭では光と風がポイントとなり、松籟といって細い松の葉に風が当たって、すっとするような音がするのです。敷地の真ん中にも庭を配置しますが、そこは竹ともみじだけで。贅沢な庭ではなく、ゆったりと和らぎを感じられることが今という時代に求められると思うのです。日本の文化の基本は自然と共にあります。自然をコントロールしようとする欧米とは異なり、私たち日本人は自然の中にいるということを表現したかったのです。
また、千利休は茶室に至る飛び石を庭に打つにあたり、「渡り六分に景四分」と言っています。「渡り」とは歩きやすさのことで、「景」とは見栄えのこと。つまりデザイン性よりも機能性を重視したというのです。さらに徒然草では「整い過ぎは悪しきこと」とも述べられています。あまり美を求めすぎてはいけない。お客様の求める機能性をまず理解した上でこそ、日本の美の世界は成立するのです。
先代が80歳の時に建てた数寄屋建築の自宅。床の間は壁に空気が通 う塗り方をしているため、時の経過と共に黒い模様が浮かび上がるように なっている。
これまでに手掛けた作品が一冊の本にまとめられる。どれもタイムレスな美しさを有している。
国内外から集めた膨大な量の材木をストック。木を乾燥させることも目的だが、多くの選択肢の中から建築に適したものを選択できるようにしておくためでもある。
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無駄のない動きで材木を加工する職人たち。
数奇屋建築の棟梁として
数奇屋建築の棟梁として日本建築をつくる際に大切にしているのは、建物というのはあくまでも器であって、我々は単なる器屋であるという考えを忘れてはいけないということです。建物は建築家だけでつくるわけでも、ましてや大工だけがつくるものでもありません。お客様の要望や考えを聞き、経験上、大工として伝えられることは伝えて、いいものを一緒につくり上げるわけです。これは施主の言いなりになることとは違います。そこにはもちろん、京都人としての根性といいますか、京都ならではの信条はしっかりと持っています。媚びたものをつくったら、1、2年は流行るかもしれませんが、すぐに衰退してしまいます。
もう一つ。共につくり上げたからといっても実はまだ完成ではありません。建築というのは「つくって半分、育って半分」。つまり使い方が大事なのであって、つくった後の使い方次第で良し悪しが決まってくる部分もあるのです。だからこそ、竣工してホテルが開業する前に一度、今回のホテルに携わる方々全員に集まってもらい、建築物の機能や空間の意味、さらにつくり手としての思いのたけをたっぷりと語らせていただく予定です。その上でホテルのスタッフの方々にはお客様を迎え入れてもらう。こうまでするからこそ、建物には人柄が滲み出てくるものなのです。それゆえ、我々は建築を通じてお客様の人柄を知ることができる。実はこれも大工としての楽しみの一つでもあるのですよ。
Profile
中村義明(なかむらよしあき)
中村外二工務店代表/数寄屋大工棟梁。1946年、大工の神様と呼ばれた中村外二の次男として京都市に生まれる。大学卒業後、中村外二工務店に入り、大工としてのキャリアをスタート。1970年、大阪万博日本庭園内茶室の新築工事を皮切りに、米国ニューヨークのロックフェラ邸(1972年)、松下幸之助邸茶室(1973年)、伊勢神宮茶室(1982〜1985年)、京都迎賓館主賓室座敷(2006年)など、錚々たる数寄屋建築に携わってきた。俵屋旅館や菊乃井、和久傳など旅館や料亭との付き合いも長く、ひらまつの「高台寺十牛庵」開業の際、数寄屋建築の再生に携わった。デンマークの建築家で家具デザイナーのフィン・ユールの家具の愛好家で、そのコレクションが趣味。
祗園八坂で感じる和の真髄
SOWAKA そわか
京の雅がひときわ強く感じられる祗園・東山に誕生した「そわか」。磨き上げられた数寄屋建築は、老舗料亭だった往時の姿をそのまま今に残している。
数寄屋建築の料亭がホテルに
〝祗園さん〞の呼び名で親しまれている八坂神社。南楼門から石鳥居を抜けてほどなくすると、右手にひときわ凛とした佇まいの建物が現れる。「そわか」はこの大正後期から昭和初期にかけて築かれた数寄屋建築を中心に営まれている宿。かつて料亭だった建物を改修し、今年3月にホテルとして開業した。
純白の暖簾をくぐると、空気が一変するのが分かる。打ち水された石畳の小径は時が止まったかのような静寂の空間へと導いてくれる。ここではあえて素足で館内に踏み入れるのがいい。足の裏から確かに伝わる木の肌触りや温もりが、時を経ても変わらない和のおもてなしの真髄を伝えてくるからだ。
〝スモールラグジュアリーホテル〞を謳うだけあり、いわゆる旅館のおもてなしとは一線を画す。ハウスルールを極力排し、日本の文化に不慣れな方でも自然に和の心に触れられるようにした。数寄屋建築の伝統を感じながら、誰もが本物の寛ぎを味わってもらいたいとの思いから、現代のスタイルに合わせた滞在を可能にする工夫が随所に施されているのである。
客室は料亭を改修した本館の11室と新たに竣工した新館の室からなる。全室の一つとして同じ意匠の部屋はなく、それぞれに趣きが異なるのが興味深い。例えば、茶の湯の風情をたたえた主庭を正面に独占するデラックスルームもその一つ。専用の濡れ縁からアクセスする空間は、あえて竹材を多用して数寄の趣きを表現していることに気付く。一方、かつて「ほら貝の間」と呼ばれた中広間だったスイートルームでは、一枚板の床板や北山杉の鴨居、幾何学的な意匠の欄間など多様な意匠が往時のままの姿で残り目を楽しませてくれる。個人邸ではなく料亭として建てられた数寄屋建築だったからこそ、部屋それぞれに意匠を変えるという贅沢なこだわりが可能となった。そしてそれが今、客室それぞれの個性となってゲストを迎え入れているわけである。
食事は東京・西麻布の名店「ラ・ボンバンス」が、京の季節の食材にひと手間加えた創作日本料理を提供する。漆喰で仕上げた妖艶な空間でいただく品々は、日本料理の伝統を踏まえながら、大胆にそして自由にジャンルを飛び超える。その遊び心はまさに数寄そのもの。祗園八坂に誕生した新たなもてなしの宿で、数寄の心を心ゆくまで体感してはいかがだろうか。
かつて「ほら貝の間」と呼ばれたスイートルーム。随所に数寄屋建築のこだわりの意匠を堪能できる。和の空間に洋の家具が自然と調和し、現代のスタイルに合わせて滞在できるのが嬉しい。
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料亭の時代には厨房だった場所がロビーとなっている。井戸や地下倉庫の跡も残る。
「食」と「とき」を愉しむ別邸
南禅寺参道菊水 なんぜんじさんどうきくすい
七代目小川治兵衛が作庭した池泉回遊式庭園と溶け込む数寄屋建築。樹齢300年を超えると言われる赤松が庭園のシンボルになっている。
一日五組だけに許される贅
岡崎にある南禅寺は1291年に亀山法皇によって開創された名刹。日本三大門の一つで、石川五右衛門の「絶景かな、絶景かな」の台詞で知られる三門などの見所が多く、桜や紅葉の名所としても人気だ。明治時代から昭和初期にかけてこの南禅寺界隈は、政財界の要人達の別荘地としても脚光を浴びた。現在でも路地に入ると当時の面影が至る所で残り、独特な空気感を醸している。
「南禅寺参道菊水」も南禅寺界隈別荘群の魅力を体感できる貴重な場所の一つだ。建物は元々、呉服商の寺村助右衛門の別荘として、明治中頃に建てられたという。特筆すべきはこの数寄屋建築の正面に配された池泉回遊式庭園の存在だろう。800坪を超える敷地のおよそ半分を占める広大な庭園は、近代庭園の先駆者とたたえられる庭師、七代目小川治兵衛(通称「植治」)による、希少な庭園なのである。当時の名士たちにとって、京都の別荘で植治に庭園を手掛けてもらうことはある種のステイタスでもあった。現在、南禅寺界隈に残る植治による庭園は15あると言われるが、一般に公開されているのは山縣有朋の別荘だった「無鄰菴」と、ここ「南禅寺参道菊水に代表されている。
呉服商の優雅な別荘を経て、昭和を五感で感じられる。夕刻、ライトアップされた庭園を目の前に眺めながら、究極の〝菊水キュイジーヌ〞をいただく時間は格別だ。約820坪という敷地を有しながら、客室の数はわずか5室という贅沢。開放的なダイニングからは四季折々、刻一刻と表情を変える庭園を真正面に望む。そして、内と外を結ぶテラス席は、庭園内を流れる小川のせせらぎを耳に、木々の息吹を感じるには最適な場所だ。小川治兵衛が創造した庭園に身を委ね、〝時の経過を愉しむ〞という贅沢を堪能したい。
年より料理旅館として営まれてきた歴史ある「菊水」は、代々伝わる数寄屋建築のリファービッシュを経て、昨年6月、新生「菊水」として新たなスタートを切った。菊水のアイデンティティを未来に継承すべく変革を起こしたのである。例えば、玄関で履物の世話をする下足番を廃止し、館内を土足にしたのもその一つだ。大きな覚悟を必要とする決断だったというが、ただ、老舗旅館だからといって古くからのしきたりに従うだけでなく、あえて時代のスタイルに合わせるという改革に本気で乗り出したのである。
料理旅館としての矜恃である料理に関しては、大阪でミシュラン三ツ星を獲得する料亭「日本料理柏屋」から主人の松尾英明氏を監修に迎え、京料理の名料理人「板前新三」の系譜を継ぐ西野悌司料理長と共に、日本古来の伝統と新たな試みを取り入れた「和会席」を新たに用意した。さらに洋食の大筆秀樹総料理長を招聘し、旅館では珍しく「京の洋食」として洋食を提供することに。例えば「、庭」と題したコースメニューは、菊水自慢の庭園からシェフがインスピレーションを得た品々が供されるというもので、京都のテロワールを五感で感じられる。夕刻、ライトアップされた庭園を目の前に眺めながら、究極の〝菊水キュイジーヌ〞をいただく時間は格別だ。
約820坪という敷地を有しながら、客室の数はわずか5室という贅沢。開放的なダイニングからは四季折々、刻一刻と表情を変える庭園を真正面に望む。そして、内と外を結ぶテラス席は、庭園内を流れる小川のせせらぎを耳に、木々の息吹を感じるには最適な場所だ。小川治兵衛が創造した庭園に身を委ね、〝時の経過を愉しむ〞という贅沢を堪能したい。
京町家の特性を生かした超モダン空間
MOGANA もがな
烏丸御池駅より徒歩7分のエリアに立地。客室は全23室。壁や床、家具の素材などの組み合わせで4タイプの部屋に分けられる。写真のMOGANAGARDENは京都町家特有の坪庭を垂直に表現した坪庭を正面に望む。白い空間と緑のコントラストが見事。
新たな建築の可能性を探求することで知られる建築家、山口隆氏の設計による空間は、伝統と現代のテクノロジーが融合したラグジュアリーな雰囲気に満ちている。
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「うなぎの寝床」と呼ばれる京町家特有の細長い敷地を生かした廊下。38mの回廊には壁や天井に格子が嵌められ、直線美を意識した造りとなっている。
こだわりの意匠と食の数々
〝もがな〞とは、願望や期待の意味を含んだ古語の終助詞のこと。「あったらいいのに」があり、日常に愉しみをもたらし、豊かな人生のきっかけとなる――。そんな願いを
名前に込めて、昨年月に「モガナ」は誕生した。日本の伝統美を意識しながら、新たなホスピタリティの可能性を追求するホテルは、〝装い〞を愉しむことをキーワードに掲げる。知的好奇心や情緒的充足感を求める旅慣れた大人に、外観を美しく飾り整え、佇まいや趣き、出発の準備をすることを基本に、様々な仕掛けで独自の世界へ誘うのだ。
京都出身の建築家、山口隆氏が手掛けた空間は、伝統的な京町家を独自の解釈で現代に甦らせた斬新なデザインが特徴だ。例えば、町家特有の〝うなぎの寝床〞を生かした廊下が約mにもわたって貫かれる様は圧巻。木やアルミ、石など各々の素材感を際立たせた意匠で、伝統と先端技術が調和された贅を極めた空間を生み出している。格子を想起させる水平と垂直の直線美による演出を目にすれば、その凛とした空気にここが特別な場所であると感じるはずだ。
徹底したこだわりは空間の意匠だけに止まらず、旅の醍醐味である食事にも見て取れる。その一つがあえて夕食を出さないこと。宿としては珍しいがそれはゲストに食の名店が数多ある京都の夜を満喫してもらいたいとの思いから。ただし、部屋で寛ぐゲストのための美容と健康に配慮した夜食などのルームサービスにはかなりこだわる。国際薬膳学院が監修する夜食は、例えば「冬の薬膳出汁掛け茶漬け」や「季節の美肌薬膳そば」など、どれもが滋養強壮によく、五臓六腑に染み入るものばかり。思わず食べ過ぎてしまう美食の京都滞在にこそ求められる、これまであるようでなかった新たな食のスタイルと言えよう。
翌朝、快適な睡眠から目覚めれば、ホテルのスタッフが指定の時間に朝食を部屋までサーブしてくれる。豊かな海と大地に恵まれた淡路島産の新鮮な食材をふんだんに用いた豪華な朝食。それを自分の部屋でゆったりと寛ぎながら、ひと品ひと品堪能できる幸せ。この瞬間を味わいたくて早くも常連客が集まる、「モガナ」とはそんな魅力溢れるホテルである。
嵐山の歴史を綴る特別な場所
翠嵐 すいらん
秋になれば翠嵐の敷地内でも目に美しい 紅葉を楽しむことが出来る。周囲の喧騒と は隔絶した落ち着いた空間を楽しみたい。
「継往開来」で新たな空間を創造
貴族文化が花開く平安京時代。早くからこの地はその四季折々の美しい自然の織り成す景観や保津川越しに見る嵐山の稜線の美しさが素晴らしく、多くの貴人に愛されてきた場所。世紀には天皇の離宮「亀山殿」があり、世紀には天龍寺の一部「龍門亭」となり、そこからの景観は「天龍寺十景」のひとつとして数えられていたほどだ。その後、「延命閣「」八賞軒」など各界の名士が絶景の庵に集い歌会を催す別荘として使用されてきた。その風光明媚な景観は、現代においても世界的な景勝地として広く知られている。
その特別な地に建てられた「翠嵐」のホテルとしてのコンセプトは「継往開来」。由緒ある嵐山の魅力を最大限に引き出しながら、未来を切り開き、訪れた人に新たな体験を提供することをその言葉に込めている。その伝統とモダンが融合した空間は、世界中から訪れる旅慣れた人々をも魅了するものだ。
客室は京都らしい日本の伝統色(菫色/藍色/翡翠色/朱色/黄金色/月白色)をキーカラーとした優雅で品格のあるデザインを施し、スイートルームを含む特別室には専用の露天風呂を設置、〜階に〜m²、平均約m²のゆとりある広さの客室が全室用意されている。ホテル内のレストラン「京翠嵐」では、京の季節の食材を生かしながら、世界無形文化遺産「WASHOKU」の伝統である会席料理の技法にフランス料理の美意識を融合した新しいスタイルの料理を提供する。
神戸川崎財閥創始者川崎正蔵の別荘として建てられ、嵐山御殿と称された豪壮華麗な「延命閣」の金砂子を用いた床の間や、川崎家の家紋入り七宝の釘隠などを修復・復元し、そこに組紐をイメージしたシャンデリアや朱色の家具を配した邸宅空間を楽しむことが出来る。築100年を超える歴史的建造物、旧「八賞軒」の伝統を現代に継承する「茶寮八翠」など、京都の歴史を感じながら絶景の中、時を過ごしてはいかがだろう。
嵐山の絶景を全面に見渡せる開放感のあるスイートルーム。黒色のフローリングと保津川を連想させる翡翠色を中心に家具の色合いをまとめ、輝く菫色のカーペットがアクセントとなっている。
「茶寮八翠」。歴史上の多くの貴人が愛した保津川と嵐山の景色を四季折々にテラスから望める。絶景を愛でる特等席で優雅にお茶菓子を楽しむことが出来る。
保津川に面した「翠嵐」。千年変わらない景観の中で、世界からの客人をもてなす手厚い準備を整えている。
和食の伝統である会席料理の技法にフランス料理の美意識を融合した新しいスタイルの料理を提供。(ディナーイメージ写真上/テリーヌその日の野菜で写真下/紅芯大根とマナガツオ)
パーソナルな癒しに溢れるホテル
THE THOUSAND KYOTO ざ・さうざんど きょうと
粗密格子に囲まれたロビーは大階段に差し込む自然光が印象的。光と影が調和し、陰翳礼讃の世界観を見事に創出している。なおホテルは今年10月に2019年度グッドデザイン賞を受賞している。
追求するゲストそれぞれの快適性
ロケーションは京都駅前。90年の歴史を誇る京都センチュリーホテルや京都タワーホテルなどを運営する京阪ホテルズ&リゾーツが、京阪グループのフラッグシップホテルとして今年1月に開業したラグジュアリーホテルだ。〝パーソナル・コンフォート・ホテル〞を標榜し、ゲスト各々に合わせた心地良いひと時を提供することにこだわる。
その日の気分や自分らしいスタイルで美食を楽しめる、シーンの異なる3つのレストランが用意されるのも、パーソナルなサービスを提供したいという思いから。日本料理の「KIZAHASHI」では庭園を眺めながら斬新なアレンジが施されたモダン割烹に舌鼓を打ち、オープンキッチンが開放的な「SCALAE」では、モダンかつオーセンティック、それでいて革新的なイタリア料理を堪能する。好きな時間に好きなスタイルでお茶やお酒を楽しみたければ「TEA&BAR」がいい。京都に伝わる茶文化を現代的に解釈し、話題の和紅茶やお茶を用いたカクテルなどで至福の時間をもてなしてくれる。
もちろん、美食以外でも空間の意匠や細部にこだわり、一人ひとりのゲストの快適性を追求する。千年の都、京都の知恵や美学を背景にした「、ザ・サウザンドキョウト」の特別なおもてなしの心に是非とも触れてほしい。
今から待ち遠しい。新規開業・リニューアル完了 間近のホテル
2020年春グランドオープン予定
ウェスティン都ホテル京都
一新される京都ホテル界の老舗
大規模リニューアルを実施している京都を代表する老舗ホテルが、創業130年という節目の年を迎える来年春に完了、グランドオープンする。建築家、村野藤吾氏による曲線美をいかした優雅なデザインを継承しつつ、時代に即した新たな設えやサービスを付加。客室の平均面積を約m²に拡張し、数寄屋風別館「佳水園」では各浴室に温泉を引き込む。敷地内の温泉を活用したスパや今冬に先行オープンする各種レストランなど、新たに登場する施設にも注目したい。
客室面積の拡大により客室数は499室から266室に(イメージ)。
2019年10月30日(水)開業
パークハイアット京都
東京に次ぐ待望のホテルの誕生
京都東山、清水寺へ至る二寧坂に面した垂涎の地。敷地からは京都市街と八坂の塔を眺望する。国内でのパークハイアットの開業は、東京に次ぐ2番目で年振り。文化の粋を極めた京都の魅力とブランドのエレガンスが融合したホテルの誕生に否が応でも期待に胸が高鳴る。同敷地内では創業142年目を迎える料亭「山荘京大和」も隣接。老舗料亭の懐石料理やシグネチャーレストラン「八坂」の鉄板焼きといった極上の美食と共に、パークハイアットの新たなおもてなしを享受したい。
落ち着いた雰囲気が漂うエントランス(イメージ)。
2019年11月1日(金)開業
アマン京都
安息の地で体感する非日常
日本で3軒目のアマンの舞台に選ばれたのは、洛北に広がる美しい森と庭。2万m²超の敷地には手付かずの自然が残り、四季折々の表情をたたえる。喧騒とは無縁の静寂の別世界に誕生するのは、客室数のプライベートリゾート。自然の景観を最大限に尊重した空間は京の伝統を踏襲しながらもモダンなスタイルに昇華される。アマン京都が位置する鷹峯地区は琳派の創始者、本阿弥光悦が居を構え、芸術村として栄えたともいわれる。自然と芸術、京の伝統と共に、アマンの非日常を体感したい。
木の温もりを感じる落ち着いた客室。