マンダリン オリエンタルで世界を旅する
マンダリン オリエンタルはイギリス領だった頃の香港からスタートし、現在、世界23の国と地域に33軒のホテルと7つのレジデンス施設を構えるアジアを代表する高級ホテルだ。
品格ある空間や客室はもちろん、アジア発のホテルならではの控え目で温かなもてなしの心、土地ごとの伝統文化を取り入れたインテリアやサービスなど、上質な寛ぎを提供するホテルとして、旅慣れたセレブからも愛されてきた。
今回は2つのマンダリン オリエンタルの魅力をご紹介しよう。
撮影・文:大橋マサヒロ
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MANDARIN ORIENTAL, BANGKOK (Thailand)
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MANDARIN ORIENTAL, DOHA (Qatar)
ORIENTALの伝統と格式を紡ぐ
MANDARIN ORIENTAL,BANGKOK
マンダリン オリエンタル バンコク
新たな歩みを始めた伝説のホテル
マンダリン オリエンタルのレガシーを宿すコロニアルな雰囲気漂うオーサーズラウンジ。
西欧諸国が遠い東南アジアを目指し、はるばる海を越えて訪れていた時代を経て、1800年代後半にタイで初めて西洋人を受け入れるためのホテルとして開業したのが、オリエンタル バンコクだ。その後、マンダリン オリエンタルに継承された後も、当時の面影を残すホテルとしてセレブ達に愛されてきた。その歴史あるホテルが8か月にも及ぶ大改修を終え、2019年11月に再開した。 ホテルの顔ともいえるラウンジロビーは以前の雰囲気を残しつつ、タイに咲く鮮やかな花々のようにエレガントな空間へと変貌を遂げた。ハイエンドホテルに欠くことのできないホスピタリティ、空間の上質さ、客室の快適さにさらに磨きをかけ、開業からのレガシーを守りつつ進化を続けていくという意思が伝わってくる。
大切に再生されたオーサーズウイングにあるオーサーズラウンジでは、ゲストや地元バンコク在住のセレブリティたちが集い、アフタヌーンティーを楽しんでいる。彼らの社交場として賑わっているこのラウンジの光景は、今も昔も変わらないものなのだろう。
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木々に囲まれプライバシーにも十分配慮されたガーデンプール
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特別なサービスとして早朝、地元僧侶の托鉢を体験できる
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タイの伝統的な衣装を着たスタッフの礼儀正しいサービスが心地よい。
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フィットネスセンターではキックボクシング体験やトレーニングを受けることができる。
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対岸のレストランやスパへは専用のボートで優雅にショートクルーズを楽しむ。
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メインプールにはサンデッキやカバナが備わり、ソフトドリンクやアイスクリームなども楽しめる。
Gourmet
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シェフが目の前で炙るスペイン産の海老。添えられているのはタイ産のグリーンマンゴー。(「ル ノルマンディー」)
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フランス人シェフのアルノー氏はタイの旬な食材を生かした料理を追求し続けている。
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伝統楽器の生演奏をBGMに優美な舞いを鑑賞しながらディナーを楽しめる「サラ リム ナーム」。
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内装や盛り付けるお皿にもこだわる「キヌ バイ タカギ」。
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「サラ リム ナーム」では伝統料理とモンなタイ料理を味わうことができる。
世界の一流シェフたちの饗宴
マンダリン オリエンタル バンコクのガーデンウィング最上階に、
フレンチの名店「ル ノルマンディー」がある。タイで最初のフレンチレストランであり、ミシュラン2つ星のアジアを代表するトップクラスのレストランだ。世界中から厳選した食材とタイで採れる旬の食材とのマッチングが素晴らしく、目と舌で楽しませてくれる。
「キヌ バイ タカギ」は、ホテルのリノベーション後に新たにオープンしたレストランだ。兵庫県芦屋の京料理店でミシュラン2つ星を獲得した高木一雄氏がプロデュースするこの店。最高級の日本の食材とタイの食材を巧みに組み合わせ、季節感と日本の美意識が凝縮された懐石料理を味わえる。
もちろん本場のタイ料理も、ぜひ味わっておきたい。「サラ リムナーム」は、タイ伝統舞踊を観ながら食事ができるレストラン。ホテルの宿泊棟から専用ボートで対岸へ渡った岸辺のテラス席で、夕暮れに染まるチャオプラヤー川を眺めながらコースディナーを楽しめ、忘れられない優雅なひと時が体験できる。
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タイのベストバーに選ばれた「ザ・バンブー バー」は、バンクを代表するジャズバー。タイの各地方にちなんだオリジナルカクテルを用意。
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このホテルを愛た作家のジョセフ・コンラッドの作品にちなんで名付けられたレストラン「ロード ジム」。
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「テラス リム ナーム」ではチャオプラヤー川沿いのテラスで食事を楽しめる。
Rooms & Spa
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フルリノベーションを終えた客室は快適さと安らぎ、そして最高の眺望を約束する。
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リバーサイドのテラスからチャオプラヤー川を一望できる。
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地元アーティストの作品がセンスよく飾られている。
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タイシルクのファブリックなどが部屋ごとに異なるテーマカラーでゲストをもてなす。
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明るく開放的なバスルームは居心地がよい。
生まれ変わった客室とスパ
リノベーションを終えたマンダリン オリエンタル バンコクには、広々としたテラスを備えた客室が増室されている。プレミア・スイートはチャオプラヤー川を望む最高のロケーション。東洋のベニスと謳われていた頃のバンコクに思いを馳せつつ、テラスから行き交う船を眺めて過ごしていると、時を忘れてしまう。客室は部屋ごとに基調となる色が異なり、シルクのファブリックや家具などは、全てタイのローカルプロダクトで統一されている。
スパ・トリートメントについても土地の伝統文化を取り入れた施術を用意しており、タイ北部の陶器を使ったマッサージが人気だ。ボートで対岸へ渡り築100年以上の伝統家屋で施術を受ける。磨き上げられたチーク材の床が素足に心地いい。静寂の中、伝統的な手法と西洋のトリートメントを融合した施術を受ける。まさに至福の時間だ。
アジア人らしい控え目で温かなもてなしの心が息づく都会のオアシス。ステイしたゲストがまたいつかこのホテルに戻りたいと感じるのは当然のことなのだろう。
中東デザインに酔いしれる MANDARIN ORIENTAL, DOHA マンダリン オリエンタル ドーハ
カタールの甘美なる異空間
治安がよく外国人に寛容なお国柄のカタールは、旅行客にも人気だ。2019年3月、その首都ドーハに、ドバイに次いで中東で2軒目のマンダリン オリエンタル ドーハが開業した。世界的に有名なデヴィッド・コリンズ・スタジオがデザインを手がけ、マンダリン オリエンタルらしいアジアンテイストやカタールの伝統素材やモチーフを取り入れつつ、スタイリッシュで都会的な雰囲気に仕上げられている。
ホテルは街の中心地、ムシェレブ・ダウンタウン・ドーハに位置し、全158室の客室と91戸のサービスアパートメントを擁する。レセプションフロアから吹き抜けの客室フロアを見上げると、斬新で深遠なイスラムデザインの美しさに思わず引き込まれてしまう。ルーフトップのプールはラグジュアリー感が漂う。プールサイドのガゼボには、眩いアラブの太陽を浴びつつカクテルやフルーツをつまむ紳士淑女の姿。3030㎡の広さを誇るホテル内のスパでは、カタールの砂漠をイメージした、砂療法のトリートメントも用意している。優雅に非日常の休日を満喫できるホテルだ。
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緑に囲まれた中庭ではゆったりとした時間を堪能したい。
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館内には中東のデザインやエッセンスが随所に散りばめられている。
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プールサイドのカバナではカクテルやフルーツをオーダーできる。
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スパ内には男女別の屋内プールがある。
Gourmet
多国籍料理と秘密の隠れ家バー
館内には9つのレストランとバー、ケーキ&ジェラートショップがあり、世界各地の様々な料理と地元食材を使った伝統料理が味わえる。
「モザイク」は多国籍料理を提供するオープンキッチンのレストラン。ドーハの高層ビルと市街の景色を望むテラス席がおすすめだ。「イズ(IZU)」はモダンな地中海料理レストラン。近海で獲れた魚のグリルや中近東の代表的な料理など、身体が喜ぶヘルシーなメニューが楽しめる。シグネチャー・カクテルやワインを楽しめるバー「アンバー(Ambar)」では、スタイリッシュな空間で夜遅くまで盛り上がれる。
実は、ホテル内にはもうひとつバーがある。その名も隠し部屋を意味する「Secret Bar」。とあるレストランの隅の扉をノックすると、バーテンダーが招き入れてくれる。内部はまるで大人の隠れ家。壁一面に並んだウイスキーやリキュール類が煌びやかにライトアップされ、まるでジュエリーショップのよう。ホテルのインフォメーションには一切触れられていないが、スタッフに尋ねれば教えてもらえる。好奇心旺盛な方には特におすすめだ。
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煌びやかな大人の世界が広がる隠れ家バー「Secret Bar」。
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レストラン「イズ( IZU)」の近海の魚介類を使ったモダンな地中海料理は日本人にも喜ばれる。
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「イズ」はナイジェリア出身の人気シェフ、イズ・アニ氏が監修する。
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彩り豊かな野菜や果物、さらに中東料理の定番レンズ豆など、ヘルシーなメニューが多い。
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独自に熟成させたリキュールとナツメヤシの果実デーツを使ったオリジナルカクテルなどを提供する「アンバー(Ambar)」。
Rooms
上品で落ち着いた雰囲気の客室はマンダリン オリエンタルならではのおもてなし。
洗練されたアラビアンデザイン
マンダリン オリエンタル ドーハのパブリックエリアや客室からは、華美な装飾や調度品で飾り立てるのではなく、ゲストがより居心地よく過ごせることに重きを置いていることが伝わってくる。また、イスラムの芸術性や文化が絶妙なさじ加減で取り入れられていて、ドーハを訪れる旅人の感性を刺激してくれる。
例えば、ロイヤルスイートルームは、幾何学模様のタイルが敷かれた廊下と、自然光を柔らかな光に変えて部屋に届けてくれる彫刻が施されたマシュラビヤ(格子状の窓枠)が印象的だ。イスラムのデザインは「目に見える音楽」ともいわれる。モチーフの反復とリズムが内なるバランス感覚を目覚めさせ、神への祈りを視覚的に展開する役割があるのだとか。確かにこの空間に身を置くと、何だか大きな優しい力に包まれた感覚になり、心穏やかに過ごすことができる。
その空間美で、旅人に視覚から癒しを与えてくれるマンダリン オリエンタル ドーハ。上質で洗練されたアラビアンデザインの魅力に浸ってみてはいかがだろうか。
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専用エレベーターでアクセスするロイヤルスイートルームの広々としたリビングルーム。
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屋外ジャグジーと中庭へつながるスタイリッシュな廊下。
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ウォークインクローゼットから続くバスルームは近未来的な雰囲気。