富裕層を幸せにする社会貢献活動
~より豊かな人生のために~

協力/ロート製薬創業家、大塚製薬創業家、パリミキ創業家、タカギ創業家、ポールスター創業家、楽天証券、東京コミュニティー財団 ほか
インタビュアー/PAVONE 編集長 小柳幸子

日本人は他人を思いやる気持ちを持っていないのであろうか? イギリスのCharities Aid Foundation によると、世界人助け指数(World Giving Index 2024)において、日本は142か国中141位にランクされている。一定期間における人助けや寄付の経験などを総合的に判断した指数である。日本人は勤勉であり、おもてなし精神を大切にしているが、社会貢献活動には消極的といわれる。その理由として、寄付金が適切に使われているか不安である、どこに寄付したらよいか分からない、一度寄付をすれば断りづらい、などの声を聞く。

今回ご紹介する一般社団法人ソーシャルビジネスバンク代表理事の東信吾氏は日本・米国・スイスの金融機関で20年以上プライベートバンカーをしながら、多くの富裕層と信頼関係を築いてきた。そこで学んだことは「幸せを感じていない富裕層がたくさんいる」という現実である。富裕層は事業承継、相続、家族の揉め事など他人に話せない問題をたくさん抱えている。東氏は富裕層からの相談を受けながら、「富裕層には物質的価値では得られない自分だけの〝社会貢献のあり方〞を見つけてもらい、人生をより豊かに過ごしてほしい。自分に適した社会貢献活動を始めることで、生きがいを持つようになった事例をいくつも見てきた」と語る。
東氏は社会を想う富裕層と過ごす時間を増やすために、金融機関を退職した。新しく始めた活動は、寄付者の幸せを願いながら自身がNPOとの橋渡し役を行うことで、社会に〝温かいお金〞と〝想い〞を循環させることである。富裕層が社会貢献活動を始めると、大きな金額が社会に循環し、実効性の高いインパクトが生まれる。新しい活動を始めてから3年、自身を起点として約2億円の寄付金が社会(NPO)に循環した。
東氏はいう。いくら善意の寄付者であっても、自分のお金がどのように社会に循環し、いかに社会の役に立っているかという実感が持てないと継続的に支援をする気持ちがなくなります。寄付者とNPOが双方向の継続的なコミュニケーションをもつことで、NPO活動を応援するだけでなく、NPOで働くスタッフにシンパシーを感じるようになります。善意に基づく寄付活動は人と人との繋がりの中で生まれると感じています。
心から楽しいと思える〝社会貢献のあり方〞を見つけるためには、時間や失敗、遠回りが必要です。すぐには見つかりません。ビジネスに例えると、新規事業を始めるようなものです。新規事業は途中で失敗を繰り返すことで、学びをえながら、徐々に成功に近づきます。ビジネスと違う点は、個人が満足する〝社会貢献のあり方〞は年齢や経験によって移り変わるので、ビジネスの成功の証しである〝お金を儲ける〞という分かりやすい指標がありません。そのためにも早い段階から少しずつ社会貢献活動を始めることで、自身が心から楽しめる支援の形を見つけてほしいと願っています。

東氏が取り組むボランティア活動は以下のとおり。
1 富裕層とNPOを繋ぐ
2 富裕層の社会貢献活動を手伝う
3 金融商品仲介業で得た収益を社会に還元する

上記3について、一般社団法人ソーシャルビジネスバンクは金融商品の仲介業によってお客様から売買手数料を頂戴している。東氏はこの活動を無給で行い、法人の純利益(内部留保)を社会に循環している。日本で初めて非営利型の一般社団法人として金融商品仲介業の営業許可を取得したのは、株式会社が追及する〝経済的利益〞ではなく、〝社会的利益〞を優先したいという想いがある。自身はいくつかの企業の顧問として生計を立てており、「欲を出せばきりがない。社会に還元する楽しさを優先したい」という。

Profile

東 信吾 (あずま・しんご)

社会活動家/プライベートバンカー/不動産鑑定士
一般社団法人ソーシャルビジネスバンク代表理事
1974年 神戸市生まれ。大阪大学卒業。

日本・米国・スイスの金融機関で20年以上プライベートバンカーを経験。2008年よりNPO 法人SK Dream Japan のスタッフとして社会貢献活動をスタート。2014年よりグラミン銀行創設者でノーベル平和賞受賞者であるムハマド・ユヌス氏とバングラデシュで自動車整備士を養成する学校を運営。貧しい家庭の若者に自動車整備技術と日本語を教え、日本で働くための道筋を作る。公益財団法人東京コミュニティー財団、公益財団法人千本財団(現KDDI、現ワイモバイル創業者:千本氏)、 一般社団法人明日へのチカラ(ロート製薬創業家:山田氏) ほか複数の団体の理事・アドバイザーを務める。EYストラテジー・アンド・コンサルティング(株) 顧問 ほか

本誌では上記の記事に続き、以下の社会貢献活動の実例を紹介しております。 
(1)Child’s Dream Foundation
(2)「メガネが買えない子どもたちを応援したい」株式会社パリミキ(メガネの三城)多根 幹雄氏 & 株式会社タカギ/ アイモール 髙城 いづみ氏
(3)「地域と連携し、子どもたちの成長を見守りたい」ロート製薬株式会社 創業家 山田 安廣 氏
(4)「日々感謝。九州の若者を支援したい」株式会社ポールスター 代表取締役社長 牧 卓彌 氏
(5)「楽天証券とともに、未来を創る。社会貢献と資産づくりの新しい形。」楽天証券株式会社 代表取締役 楠 雄治 氏
(6)公益財団法人 東京コミュニティー財団